内容説明
上京してマッサージ師の勉強を始めた由布(ゆう)は、勧める人あって繊維業者の愛川と所帯を持った。彼女の着ていた父の遺品の古セーターをヒントに大ヒットを飛ばした愛川は、会社が大きく成長するにつれ、田舎育ちの由布に満足しないようになる。離婚の代償に渡された金と家を元手に、温泉旅館時代の友だちの助けを借りて飲み屋を始めた由布には、思いもかけぬ事業の才能があったのだった……。一人の女性の運命を愛情こめて描き、時代をも鮮明に浮かびあがらせた傑作長篇。
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感想・レビュー
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shizuka
25
母へ結婚の決意を告げる手紙から始まる下巻。由布の初々しく希望に満ちた始まりは、何かを予感させた。夫は信じるに値しない男だった。子を産ませ、苦労させた古女房をさっさと見切ったりするところ、正に一気に権力を手にした男ならでは。けれど、ここからの由布の巻き返しがすごかった。手切れ金から飲み屋を始め、最終的に立派な旅館の女将になれたのは、根が真面目な由布だから成し得たこと。九州の不遇時代苦楽を共にした友を呼び寄せ、一緒に働き隆盛を極めた手腕もすばらしい。大切な人を失いながらも、今も尚前進しつつある由布に、乾杯。2015/12/07