内容説明
前近代への郷愁にとらわれ、新政府へは恨みごとばかりの地方役人を相手に、山岡はあえて憎まれ役を引き受け、大胆な改革にのりだす。豪胆かつ温情あふれる人柄にやがて周囲の心は氷解、改革は着実に進み、いっそう山岡の名は高まるが、その彼に懇請されたつぎの仕事は天皇の御教訓掛であった。力自慢の青年天皇を相撲で投げ飛ばすなど、様々なエピソードを残した純真忠誠の硬骨漢は、天皇から名もなき市井の人にまで深く愛され、剣禅書の達人として爽やかな生涯をとげたのであった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Melody_Nelson
6
命もいらず名もいらず、金も官位もいらない人…とは西郷が鉄舟を評した言葉と言われているが、本書を読むと納得する。勿論、何割増しかで良く書かれているのだろうが、それにしても素晴らしい。御一新後、まずは静岡で働き、その後、茨城、伊万里で知事のようなことをしたのは知らなかった。その後、宮中に務め、明治天皇からの信頼も厚かったようだが、サクッと辞めてしまう。ずっと芯がぶれずにいたのは、剣と禅の賜物か。迷走する西郷や、皮肉屋で俗物的になった海舟との差が際立つが、鉄舟は彼等を最後まで悪く言わなかったのも立派。2018/04/15
さっと
5
再読。明治新政府の内部の軋轢と苦心が描かれる政治的な面と、鉄舟個人の身のまわりの出来事とのコントラストが印象的な一巻。地方役人や宮中出仕の身分にありながら常に貧乏だったという鉄舟の家は、「居候の天国」と呼ばれるほど内弟子や居候が多かったとか。「鉄舟の交際範囲は、大臣から乞食に至るまであらゆる階層に亙っている」とはいえ、会葬者5,000人とはすごい。その人柄がしのばれる。2013/08/16
さっと
3
明治時代の鉄舟というと、西郷の依頼から宮中に出仕して明治天皇に仕えたことで、様々なエピソードを残していて殊に有名だけれど、その前に、茨城や伊万里の県庁の役人になって地方行政の混乱を治めていたことを初めて知った。約束どおり10年ぴったりで宮中勤めを辞した後は剣一筋に生きるなど、どこまでもさわやか。こりゃあ、ほれるぜ。2012/06/03
Ichiro51
0
★★★★★2015/12/02
クイークェグ
0
今の世で 何故に浮ばぬ 鉄の舟2014/04/01