万葉秀歌 〈上巻〉

個数:1
紙書籍版価格
¥990
  • 電子書籍
  • Reader

万葉秀歌 〈上巻〉

  • 著者名:斎藤茂吉
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 岩波書店(2013/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004000020

ファイル: /

"Reader"および"Reader"ロゴは、ソニー株式会社の商標です。

内容説明

「万葉集入門」として本書の右に出るものはいまだない.万葉の精神をふまえて自己の歌風を確立した一代の歌人たる著者が,約四百の秀歌を選び,簡潔にしてゆきとどいた解説を付して鑑賞の手引きを編んだ.雄渾おおらかな古代の日本人の心にふれることにより,われわれは失われたものを取り戻す.

目次

目  次
   序
   従属選出歌
   参照注釈書略表

 巻第一

 たまきはる宇智の大野に(中皇命・四)

 山越の風を時じみ(軍 王・六)

 秋の野のみ草苅り葺き(額田王・七)

 熟田津に船乗りせむと(額田王・八)

 紀の国の山越えて行け(額田王・九)

 吾背子は仮廬作らす(中皇命・一一)

 吾が欲りし野島は見せつ(中皇命・一二)

 香具山と耳梨山と(天智天皇・一四)

 渡津海の豊旗雲に(天智天皇・一五)

 三輪山をしかも隠すか(額田王・一八)

 あかねさす紫野行き(額田王・二〇)

 紫草のにほへる妹を(天武天皇・二一)

 河上の五百箇磐群に(吹黄刀自・二二)

 うつせみの命を惜しみ(麻続王・二四)

 春過ぎて夏来るらし(持統天皇・二八)

 ささなみの志賀の辛崎(柿本人麿・三〇)

 ささなみの志賀の大曲(柿本人麿・三一)

 いにしへの人にわれあれや(高市古人・三二)

 山川もよりて奉ふる(柿本人麿・三九)

 英虞の浦に船乗りすらむ(柿本人麿・四〇)

 潮騒に伊良虞の島辺(柿本人麿・四二)

 吾背子はいづく行くらむ(当麻麿の妻・四三)

 阿騎の野に宿る旅人(柿本人麿・四六)

 ひむがしの野にかぎろひの(柿本人麿・四八)

 日並の皇子の尊の(柿本人麿・四九)

 〓女の袖吹きかへす(志貴皇子・五一)

 引馬野ににほふ榛原(長奥麿・五七)

 いづくにか船泊すらむ(高市黒人・五八)

 いざ子どもはやく日本へ(山上憶良・六三)

 葦べ行く鴨の羽がひに(志貴皇子・六四)

 あられうつ安良礼松原(長皇子・六五)

 大和には鳴きてか来らむ(高市黒人・七〇)

 み吉野の山のあらしの(作者不詳・七四)

 ますらをの鞆の音すなり(元明天皇・七六)

 飛ぶ鳥の明日香の里を(作者不詳・七八)

 うらさぶる情さまねし(長田王・八二)

 秋さらば今も見るごと(長皇子・八四)

 巻第二

 秋の田の穂のへに霧らふ(磐姫皇后・八八)

 妹が家も継ぎて見ましを(天智天皇・九一)

 秋山の樹の下がくり(鏡王女・九二)

 玉くしげ御室の山の(藤原鎌足・九四)

 吾はもや安見児得たり(藤原鎌足・九五)

 わが里に大雪降れり(天武天皇・一〇三)

 わが岡の

 我が背子を大和へ遣ると(大伯皇女・一〇五)

 二人行けど行き過ぎがたき(大伯皇女・一〇六)

 あしひきの山の雫に(大津皇子・一〇七)

 古に恋ふる鳥かも(弓削皇子・一一一)

 人言をしげみ言痛み(但馬皇女・一一六)

 石見のや高角山の(柿本人麿・一三二)

 小竹の葉はみ山もさやに(柿本人麿・一三三)

 青駒の足掻を速み(柿本人麿・一三六)

 磐代の浜松が枝を(有間皇子・一四一)

 家にあれば笥に盛る飯を(有間皇子・一四二)

 天の原ふりさけ見れば(倭姫皇后・一四七)

 青旗の木幡の上を(倭姫皇后・一四八)

 人は縦し思ひ止むとも(倭姫皇后・一四九)

 山吹の立ちよそひたる(高市皇子・一五八)

 北山につらなる雲の(持統天皇・一六一)

 神風の伊勢の国にも(大来皇女・一六三)

 現身の人なる吾や(大来皇女・一六五)

 磯の上に生ふる馬酔木を(大来皇女・一六六)

 あかねさす日は照らせれど(柿本人麿・一六九)

 島の宮まがりの池の(柿本人麿・一七〇)

 東の滝の御門に(日並皇子宮の舎人・一八四)

 あさ日照る島の御門に(日並皇子宮の舎人・一八九)

 敷妙の袖交へし君(柿本人麿・一九五)

 零る雪はあはにな降りそ(穂積皇子・二〇三)

 秋山の黄葉を茂み(柿本人麿・二〇八)

 楽浪の志我津の子らが(柿本人麿・二一八)

 妻もあらば採みてたげまし(柿本人麿・二二一)

 鴨山の磐根し纏ける(柿本人麿・二二三)

 巻第三

 大君は神にしませば(柿本人麿・二三五)

 否といへど強ふる志斐のが(持統天皇・二三六)

 否といへど語れ語れと(志斐嫗・二三七)

 大宮の内まで聞ゆ(長意吉麻呂・二三八)

 滝の上の三船の山に(弓削皇子・二四二)

 玉藻かる敏馬を過ぎて(柿本人麿・二五〇)

 稲日野も行き過ぎがてに(柿本人麿・二五三)

 ともしびの明石大門に(柿本人麿・二五四)

 天ざかる夷の長路ゆ(柿本人麿・二五五)

 矢釣山木立も見えず(柿本人麿・二六二)

 もののふの八十うぢ河の(柿本人麿・二六四)

 苦しくも降り来る雨か(長奥麻呂・二六五)

 淡海の海夕浪千鳥(柿本人麿・二六六)

 〓鼠は木ぬれ求むと(志貴皇子・二六七)

 旅にしてもの恋しきに(高市黒人・二七〇)

 桜田へ鶴鳴きわたる(高市黒人・二七一)

 何処にか吾は宿らむ(高市黒人・二七五)

 疾く来ても見てましものを(高市黒人・二七七)

 此処にして家やもいづく(石上卿・二八七)

 昼見れど飽かぬ田児の浦(田口益人・二九七)

 田児の浦ゆうち出でて見れば(山部赤人・三一八)

 あをによし寧楽の都は(小野老・三二八)

 わが盛また変若めやも(大伴旅人・三三一)

 わが命も常にあらぬか(大伴旅人・三三二)

 しらぬひ筑紫の綿は(沙弥満誓・三三六)

 憶良等は今は罷らむ(山上憶良・三三七)

 験なき物を思はずは(大伴旅人・三三八)

 武庫の浦を榜ぎ回む小舟(山部赤人・三五八)

 吉野なる夏実の河の(湯原王・三七五)

 軽の池の浦回行きめぐる(紀皇女・三九〇)

 陸奥の真野の草原(笠女郎・三九六)

 百伝ふ磐余の池に(大津皇子・四一六)

 豊国の鏡の山の(手持女王・四一八)

 石戸破る手力もがも(手持女王・四一九)

 八雲さす出雲の子等が(柿本人麿・四三〇)

 われも見つ人にも告げむ(山部赤人・四三二)

 吾妹子が見し鞆の浦の(大伴旅人・四四六)

 妹と来し敏馬の埼を(大伴旅人・四四九)

 妹として二人作りし(大伴旅人・四五二)

 あしひきの山さへ光り(大伴家持・四七七)

 巻第四

 山の端に味鳧群騒ぎ(舒明天皇・四八六)

 君待つと吾が恋ひ居れば(額田王・四八八)

 今更に何をか念はむ(安倍女郎・五〇五)

 大原のこの市柴の(志貴皇子・五一三)

 庭に立つ麻手刈り干し(常陸娘子・五二一)

 ここにありて筑紫やいづく(大伴旅人・五七四)

 君に恋ひいたも術なみ(笠女郎・五九三)

 相念はぬ人を思ふは(笠女郎・六〇八)

 沖へ行き辺に行き今や(高安王・六二五)

 月読の光に来ませ(湯原王・六七〇)

 夕闇は路たづたづし(大宅女・七〇九)

 ひさかたの雨の降る日を(大伴家持・七六九)

 巻第五

 世の中は空しきものと(大伴旅人・七九三)

 悔しかも斯く知らませば(山上憶良・七九七)

 妹が見し楝の花は(山上憶良・七九八)

 大野山霧たちわたる(山上憶良・七九九)

 ひさかたの天道は遠し(山上憶良・八〇一)

 銀も金も玉も(山上憶良・八〇三)

 常知らぬ道の長路を(山上憶良・八八八)

 世間を憂しと恥しと(山上憶良・八九三)

 慰むる心はなしに(山上憶良・八九八)

 術もなく苦しくあれば(山上憶良・八九九)

 稚ければ道行き知らじ(山上憶良・九〇五)

 布施置きて吾は乞ひ・む(山上憶良・九〇六)

 巻第六

 山高み白木綿花に(笠金村・九〇九)

 奥つ島荒磯の玉藻(山部赤人・九一八)

 若の浦に潮満ち来れば(山部赤人・九一九)

 み芳野の象山の際の(山部赤人・九二四)

 ぬばたまの夜の深けぬれば(山部赤人・九二五)

 島隠り吾が榜ぎ来れば(山部赤人・九四四)

 風吹けば浪か立たむと(山部赤人・九四五)

 ますらをと思へる吾や(大伴旅人・九六八)

 千万の軍なりとも(高橋虫麿・九七二)

 丈夫の行くとふ道ぞ(聖武天皇・九七四)

 士やも空しかるべき(山上憶良・九七八)

 振仰けて若月見れば(大伴家持・九九四)

 御民われ生ける験あり(海犬養岡麿・九九六)

 児等しあらば二人聞かむを(守部王・一〇〇〇)

 巻第七

 春日山おして照らせる(作者不詳・一〇七四)

 海原の道遠みかも(作者不詳・一〇七五)

 痛足河河浪立ちぬ(柿本人麿歌集・一〇八七)

 あしひきの山河の瀬の(柿本人麿歌集・一〇八八)

 大海に島もあらなくに(作者不詳・一〇八九)

 御室斎く三輪山見れば(作者不詳・一〇九五)

 ぬばたまの夜さり来れば(柿本人麿歌集・一一〇一)

 いにしへにありけむ人も(柿本人麿歌集・一一一八)

 山の際に渡る秋沙の(作者不詳・一一二二)

 宇治川を船渡せをと(作者不詳・一一三八)

 しなが鳥猪名野を来れば(作者不詳・一一四〇)

 家にして吾は恋ひむな(作者不詳・一一七九)

 たまくしげ見諸戸山を(作者不詳・一二四〇)

 暁と夜烏鳴けど(作者不詳・一二六三)

 巻向の山辺とよみて(柿本人麿歌集・一二六九)

 春日すら田に立ち疲る(柿本人麿歌集・一二八五)

 冬ごもり春の大野を(作者不詳・一三三六)

 秋津野に朝ゐる雲の(作者不詳・一四〇六)

 福のいかなる人か(作者不詳・一四一一)

 吾背子を何処行かめと(作者不詳・一四一二)
   改版に際して
   参考地名一覧(二〇一三年現在)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

104
昭和の大歌人斉藤茂吉が万葉集の秀歌を選び出し、解説を付けたもの。茂吉の解説は的確なものだと思うが、大仰で重々しくて親しめなかった。それを読むと万葉の歌人たちが眉間にしわを寄せ、3時間ぐらいうんうん唸りながら、歌を詠んだのではないかと思ってしまう。そうではなくて、もっとおおらかな感じで自分の胸に浮かんできた感情を飾らずに、エイヤと表現したのが、万葉集の歌ではないとかと思った。とは言え選ばれているのは秀歌ばかりで、暗唱して口ずさみたくなるものが多かった。2015/04/06

KAZOO

102
この本も中学時代から何度買い替えてきたのかなあと思います。斎藤茂吉による万葉集入門の本です。結構解説は今の人にはかなり難しい言葉などがあって骨が折れると思いますが、万葉集すべてを読む必要はないでしょうが日本の古典をこれから勉強しようという人にとっては最低限読むべき本ではないでしょうか?上巻は巻7までと従属選出歌が収められています。2015/09/15

夜間飛行

63
茂吉は歌意を穿鑿せず、すなおに有りの儘に受け取ろうとする。例えば《山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなく》では「黄泉に行く」という説を退け、山吹の咲く泉への道が判らないと字義通りに受け取って、姉の急逝にどうしてよいか判らぬ弟の気持を有りの儘に汲み取ろうとする。「大体を想像して味わうにとどめる」のが茂吉の鑑賞スタイルだ。一方、《渡つ海の豊旗雲に入日さし今夜の月夜清明くこそ》の「豊旗雲」を「如是荘大雄厳の歌詞」と評するなど、言葉の端々から古代日本語をいかに尊び作歌の糧としていたかが伝わってくる。2014/11/08

佐島楓

50
万葉集の注釈書がほしく、全首フォローするのはおそらく大変なのでセレクト。全体の一割ほどの掲載とはいえ、さすがとても細やかな解説。下巻へ。2016/04/04

スプーン

37
(一通り読み終えての感想)斎藤茂吉が選んだ、万葉集の抜粋歌集。風情豊かで、素朴な愛にあふれた歌集。ここにあるのはココロの平安である。2019/03/04

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/470505
  • ご注意事項
 

同じシリーズの商品一覧

該当件数2件 全てにチェックを入れる/全てにチェックをはずす