内容説明
四月一日の朝、M中学寄宿舎内で恐ろしい事件が起きた。学生の一人が自室で、何者かに殺されたらしいのだ。現場は惨澹たる有様で、机は覆り、インクが流れ、破壊された石膏細工の破片が部屋一面に飛び散っていた。そして夜具の白いシーツには、ベットリしみついた生生しい血潮が! しかし不思議なことに、肝心の死体が部屋のどこにもなく、また夜中に物音を聞いた学生は一人としていなかった……。処女作「恐ろしき四月馬鹿」を初めとした横溝正史初期短編傑作選(大正編)!
カバーイラスト/杉本一文
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
57
作者が二十そこそこで書いた14編が収められている。クリスティのデビューが大正9年だから、たぶん大正時代はミステリの読者層も確立しておらず、作者のめざす水準もそれに応じたものに過ぎなかっただろう。従って、後の横溝正史を知る人には稚拙な印象を与えるかも知れないが、そんな中にも彼らしさはちゃんとあると私は思う。それは怪奇趣味でもエログロでもなく、読者の探究心をそそるのを第一にする事である。どの作品も必ず、単純ではあっても謎を配し、結末は一捻り二捻りさせている。横溝正史の本質を知るには、読んで損のない一冊だろう。2014/08/22
Yu。
26
今後の大活躍が読み取れる機知に富んだ若き著者の類まれない才能が伺える14篇の短篇集。。ユーモア ブラック シリアスと‥ もうどれもが面白い!!なかでも、変装する事で自身のコンプレックスを隠す醜男が巻き込まれるアハハでトホホな推理劇が描かれる「広告人形」は特に印象深い(๑´艸`๑)2018/06/24
林 一歩
24
数え切れない程の再読。超初期の作品群で、正直レベルはかなり低いのだが、それでも頁を捲る手が止められないのは後に完成する流麗な文体の片鱗が散りばめられているから。『裏切る時計』が好み。タイトル自体が出オチなんだけど(苦笑)2014/03/23
Kouro-hou
13
角川文庫合わせて1千万冊&横溝夫妻の金婚式記念の初期短編集の文庫化・分冊1冊目。こちらは大正期の作品を収録。表題作は横溝の処女作として有名ですが、御大曰く「友人が海外物を翻案して応募したら当選したというから、自分もやってみたら当選した」おおらかな時代でございました。kindle版は「赤屋敷の記録」が未収録。まだミステリとは言い切れない小品中心ですが、断片は後の長篇に繋がっていくモノも多く、これが組み合わさり化学反応を起こしたり爆発したりして、由利先生や金田一さんのシリーズになっていくのだな、と思えます。2014/10/30
大泉宗一郎
10
横溝正史の処女作。表題作が発表されたのは大正十年春。当時一八歳。物語はお粗末ながら、その若々しい文体から、横溝の早熟な文才が伺い知れる。『犯罪を猟る男』江戸川乱歩名義での執筆作。恩師の名を借りているだけに、ストーリーもキャラクターも、しっかりと面白く出来上がっている。いや、たまらん。『執念』ユーモラスな語り口。オチが弱いのと犯人の必然性の無さを除けば、それなりに読める。全体的に、ちょっと残念な感じだが、ここで磨かれた技術が世紀の傑作を生み出すことになったことを、僕らは頭の片隅に留めておかなければならない。2015/03/16
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