獄中記

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  • サイズ B40判/ページ数 224p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784990558727
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0295

内容説明

1906(明治39)年―、東京外語大を出て8カ月で入獄するや、看守の目をかすめて、エスペラント語にのめりこむ。英・仏・エス語から独・伊・露・西語へ進み、「一犯一語」とうそぶく。生物学と人類学の大体に通じて、一個の大杉社会学を志す。出歯亀君、野口男三郎君ら獄友と交際する好奇心満足主義。牢格子を女郎屋に見立て、看守の袖をひく堺利彦は売文社以前。「おい、秋水!」という大杉に気づかず、歩み去る逆徒・幸徳。21歳の初陣から、大逆事件の26歳まで―、自分の頭の最初からの改造を企てる人間製作の手記。

目次

市ヶ谷の巻(前科割り;僕の前科 ほか)
巣鴨の巻(ちょいと眼鏡の旦那;旧友に会う ほか)
千葉の巻(うんと鰯が食えるぜ;下駄の緒の芯造り ほか)
続獄中記(畜生恋;女の脛の白きを見て ほか)
獄中消息(市ヶ谷から;巣鴨から ほか)

著者等紹介

大杉豊[オオスギユタカ]
1939年、横浜市生まれ。大杉栄が殺された当日に訪ねた弟が父であり、そこで生まれた。東京都立大学社会学科卒業。東京放送(TBS)入社、調査・営業・編成部門を経て定年退職。東放学園専門学校・常磐大学国際学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Y2K☮

42
甘粕事件で虐殺されたアナーキスト大杉栄(佐野眞一「甘粕正彦乱心の曠野」では甘粕は責任を被っただけという説だった。真偽は不明)。よくある事だが、日本史教科書などで感じた印象とは随分違う。確かに残虐でふてぶてしい一面はあるけど、牢獄に入る度に新たな外国語を習得してしまう鋭敏な頭脳とタバコや性欲を忘れるまで勉強に没頭できる勤勉さは素直に凄いと思う。そして少なくともこの本の中では人間的にも柔らかく、思想に凝り固まっている感じではない。家族への細かい配慮など意外に常識人だなと。怖いもの見たさでもう少し調べてみたい。2015/10/18

Y2K☮

34
三度目の読了。相変わらず獄中の人間模様が面白い。ただ今回は妻の堀保子が気の毒という印象が強く残った。たくさんの洋書や語学書を毎回差し入れるだけでも大変だったはず。今年で甘粕事件から100年。松村圭一郎「くらしのアナキズム」を再読したくなった。言葉の意味をイマイチ理解できていないのだが、カネと性にだらしなく、無責任とすら映るライフスタイルが当時はアナキズムの一部と考えられていたのだろうか。だとしたらその要素は要らない。多数派の声や常識に囚われず、国に極力頼らず、自力でどうにかする姿勢をアナキズムと呼びたい。2023/11/29

Y2K☮

33
スペイン語の勉強を再開しようと思ったら、本書が脳裏に浮かんだ。一犯一語。有言実行。いい刺激を貰った。ところで著者の同志である幸徳秋水は管野スガとの不倫を責められて仲間に距離を置かれたらしいが、スガの夫だった荒畑寒村は或いはそれゆえに大逆事件への連座を免れたのだろうか。著者ものちに四角関係に端を発する事件で同志から孤立し、結果的に悲惨な最期を遂げた。自由恋愛は今読んでいるハクスリー「すばらしい新世界」でも重要なテーマ。若い頃ならともかく、今はユートピアとは思えない。最終的に著者はどういう考えに至ったのかな。2019/12/04

JunTHR

2
大杉栄にも関わらず、ホントにいわゆる“獄中記”で、政治性は垣間見えるものの基本的には獄中での小話集(特に前半は)。驚くべきは、現代の獄中記との共通点がものすごく多いということ。獄中での些細な悩み(寒いとか、看守がウザイとか、キチガイが多いとか)だけでなく規則の面(本の冊数制限、風呂)でもほとんど変わらない。さすがにもう変わったけど、監獄法生き延びすぎたよね。2012/04/08

anaksi

1
諧謔にして闊達、好奇心旺盛に記された獄中記。大杉の大杉たる所以。後半に収められている書簡集も興味深い。たった一人に送ったとは勿体無い…と言いたくなるほど実に文学的だ。獄窓から眺める季節の移ろいを記す文章が実によい叙情。そして大量の読書に驚く。内容も初期はバクーニンやクロポトキンが多かったが、後期は実に多方面に亘り読んでいる。しかも多言語で。実に「獄中で自己を形成した」大杉の面目躍如。改めて実に惜しい才能だ。2017/03/27

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