内容説明
ノーベル賞受賞作家が描く、敗戦後から1950年代のドイツ。
目次
エルザ・バスコライトの死
ベツレヘムの知らせ
パンの味
思いがけない出来事
青白アンナ
小人と人形
当時の天井
よみがえり
攻撃
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
76
何度も読んだ。戦争による市井の人々の悲しみや苦しみが、素朴な文章の奥から静かに滲み出てくるようだった。人々の中に深く刻みつけられ永く残り続ける戦争の傷痕は、剥き出しにされて描かれていない分、一層胸に迫ってくるものがある。けれども仄かな光が全体を包み込んでいるようにも思え、不思議なことに重すぎる読書にはならない。著者の人々を見つめる温かい目線を終始感じるからなのだろうと思う。2022/08/17
ぺったらぺたら子
15
何も知らず手に取りパラパラめくり、忽ち、これはと借り出したらノーベル賞作家との事。間違いなく短編の理想的なかたち。省略と暗示、象徴で切り取られた悲劇の、そして生命の触感。パサパサの「パンの味」、絶品。そして「青白アンナ」の、理屈も何も無い、傷ついた魂が静かに出会うのが眩しいラストの優しさと強さに私は何故か「ゲンセンカン主人」のような戦慄を覚えた。殆ど語らない、省略しつくされる事が生む驚異的な力。そして戦争の破壊の中から現れるキリスト教的なヴィジョンの数々。石川淳のあのあたりを思い出しますね。どれも傑作。 2019/01/23
Ra
2
どこかふわふわして夢見心地。戦争のつらい悲しみもやさしく暖かい。ノーベル賞作家とは知らずに読んだ。全てを書かず、読者に委ねられる。ふんわりした余韻を残して。2019/12/17
のうみそしる
2
掌編だからこそわりと難解。どの作品にも戦争の惨禍が見られる。キリストすぎるのはあんまり好きではないが。「俺の娘は死んじまったあ」2018/07/05
serene
1
九つの短編ひとつひとつが、静かに、けれど確かに、読み手の心に沁み入ってくる。 何度も繰り返し読んでしまう。 読むたびに異なったきらめきを見せてくれる。 まるで万華鏡のよう。 2011/07/02
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- 和書
- ぼく、もうなかないよ