内容説明
光瀬龍、没後10年メモリアルコレクション。
目次
第1章 幼い頃―記憶の中に灼きついて消えないもの(帝都上空に敵一機)
第2章 青年の頃―意欲と情熱だけを抱いて彷徨う(見果てぬ夢を―ロン先生の青春記;肖像 菊川善六 ほか)
第3章 作家の道―流浪の末に辿り着いた終着点(タイタン六世;晴の海1979年)
第4章 時空の旅―人はそれを東洋的無常観とよぶ(暁はただ銀色;残照一九七七年 ほか)
第5章 今、再び―虚無を呑み込む暁の砦(暁の砦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スターライト
2
光瀬が自身について語ったエッセイと、彼の短篇でつづることにより自伝ぽく構成した好著。少年時代はけっこうやんちゃだったとは、意外。戦争体験が自らの作品に色濃く反映していることがうかがわれた。単行本未収録の作品や、ファンジン等の入手困難な出版物からの転載が多く、貴重な一冊。伝説の「タイタン六世」を読めたのは、嬉しかった。2010/07/25
kokada_jnet
2
空襲体験、4年しか住まなかったのに「故郷」としてこだわった岩手県前沢町への思い、さまざまな学校や職を転々とした20代の文学青年時代。などなど。作家・光瀬龍の知られざる原像が解き明かされる。30歳で「宇宙塵」に入会し、翌年31歳で女子高の教師となり「はじめて定職についた」という経歴には驚かされる。2009/08/14
小説大好き
1
作者の小説が大好きなので、読んでよかったと思いました。今後の作家研究において貴重な資料群として機能すると思います。私としては、小説もさることながら、幼少期について詳しく語られているエッセイが、戦時の詳細な記録という意味でも価値のあるものだと感じました。燃えている子供の死体で暖を取った経験談など、流石の描写力で読ませるものがあります。また、彼の作品に散見されるモチーフの由来と考えられるエピソードも多く、総合的に満足できる一冊です。収録短編に登場する食い意地の張った阿修羅王はファン必読だと思います。かわいい。2021/11/20
白陽花
0
エッセイも貴重なのだが、今では手に入らない短編小説が目に留まる。とくに金翅鳥王縁起は百億の昼と千億の夜の解釈の参考となった。2011/06/06
いちはじめ
0
自身のことを語ったエッセイや、実体験がヒントになっているらしき小説で構成。単行本未収録が多いのも魅力。初出が団鬼六全集4という「幸福な作家、団鬼六氏」のように団鬼六を紹介した後半をばっさり割愛したためタイトルが意味不明になるような編集方針は疑問が残るが、よくぞここまでレアな原稿を集めた点では頭が下がる。発行が(2009年)7月7日と、祥月命日なのも、心憎い2009/07/24