目次
1 文学論・状況論(われわれは、いかにして小ブル急進主義者となるか;「純文学」をもこえて;現代小説の布置―『永山則夫問題』の視角から ほか)
2 作家論・思想家論(性の隠喩、その拒絶―中上健次の『紀州』以降;物語の重力の中で小説は如何にして生息するのか―中上健次『重力の都』を読む;異化するノイズ―中上健次『奇蹟』を読む ほか)
3 文芸時評(「(最後の)小説」は冷戦後をどう生きるか―「サリン‐オウム」事件と大江健三郎『燃えあがる緑の木』
ノイズは「生」を迷宮と化す―大西巨人『迷宮』
「女性作家」になる―金井美恵子『恋愛太平記』 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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5
90年代の文学を中心とした批評集。かなり読ませる。批評集なので要約不可能だが、著者の批評に対する姿勢の統一性は要約できようか。90年代とはバブル以後であり、豊かさを享受した後の時代とでもいえよう。それまで知識人とはマルクス主義(あるいはそれに対する抵抗)を中心としていたが、それが精算されたことを意味する。それは文学内の左派ではフェミニズムやポストコロニアルの隆盛に繋がり、右派では新しい教科書を作る会という杜撰な知性の誕生にも繋がったといえよう。過去に罪を負ったらそれが回帰するのは当然であり福田和也(右派)2018/03/17
Z
4
の言うように都合の悪い歴史的事実も引き受ける者こそ真のナショナリストとし「作る会」を退け、左派を戦後民主主義の域を出ないと批判する。ここでいう戦後民主主義とは資本主義、歴史の問題(貧困、植民地、女性)と責任、疚しい良心(知識人=学問の政治性をうたいプチブル的な自己の立場を正当化し知識人と大衆の関係を片付ける態度cニーチェ)を両立する知識人の有り様である。論考内でマルクス、精神分析を基に、彼らの思想が吟味される。ベースにあるのは大枠規定している資本主義から目を背ける(小さな物語の乱立に対する否定)な 2018/03/17
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2
「戦前型の国民国家は、それのためには個々の国民が死をも賭けうる価値を持ったものとして表象され、そのことによって国家は国民を統合しえた。これに対して、戦後民主主義国家は福祉――例えば、国民健康保険や厚生年金制度など――によって、死にいたるまで国民を統括するものだった。/国民国家の要諦が「死すべき存在」としての人間の支配にかかわるものだとすれば、福祉国家はそのためのイデオロギーをさらに巧妙化し強化していると言えよう」(435ページ)2017/04/23
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