内容説明
人間科学としての現象学的研究において我々が試みているのは、実践知や経験知といった言葉にし難いと思われるものの理解を、注意深い仕方で言語を用いて呼び覚ますことである。教育、医療・看護、福祉、カウンセリングなど他者との応答的関係を基盤とする専門家の実践には、訓練可能な技能や知識だけでなく、思慮深さ、直観、情念、そしてタクト豊かな受容力といった能力が求められる。それゆえ本書で展開される解釈学的現象学は、こうした専門家の実践的思考および熟達に深く関わり、寄与するものといえよう。
目次
第1章 人間科学
第2章 生きられた経験の本質へと向かうこと
第3章 経験を我々がそれを生きるように探究すること
第4章 解釈学的現象学的反省
第5章 解釈学的現象学的に書くこと
第6章 強力に方向づけられた関係を保つこと
第7章 部分と全体を考え、研究の文脈を整える
著者等紹介
マーネン,マックス・ヴァン[マーネン,マックスヴァン][Manen,Max van]
オランダに生まれる。1967年にカナダに移住。現在、アルバータ大学教育学部教授
村井尚子[ムライナオコ]
2002年、京都大学大学院教育学研究科、博士後期課程教育科学専攻単位取得満期退学。現在、大阪樟蔭女子大学児童学部児童学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みき
4
経験は常に個人的で常に違う状況に置かれている。しかしそれは、ありうる経験として普遍的なものにもなる。たとえば、小説だとかがそうで、個人的な誰かのストーリーであるはずなのに、まさにこれは自分だと深い共感が起こることがある。そのストーリに対して誠実に思慮深くあることで、ある体系が生まれたり、それがより深くなれば理論にもなったりする。経験の現象学的研究についてかなり注意深く扱われた本だった。2018/11/29
文狸
0
解釈学的現象学的な研究を実践する著者が、「書くこと」について論じている章は、自分がやってきたのはまさにこういうことだったのかと膝を打った。末尾に付けられた用語集も丁寧で勉強になる。2022/06/07