出版社内容情報
《内容》 一般的に正常な消化管粘膜は,細菌はもとより蛋白質さえ吸収しない構造とされている。しかし近年,腸管内細菌の生体内への移行が発見され,「バクテリアルトランスロケーション(BT)」と呼ばれる考え方が提唱された。現在,医療の進歩に伴いICUでの重症症例の治療が増加しているが,死亡例は敗血症による多臓器不全(MOF)によるものが多く,その原因としてBTが最も注目されている。本書はわが国で初めて,BTに関して歴史的背景から病態,診断,対策,さらに最も重大な関連病態としてのMOFとの関係に至るまでを一つにまとめた専門書である。 《目次》 第1章 歴史と今日的意義I.BTの発見と定義II.歴史A)BergによるBT報告前B)BT報告後III.エンドトキシントランスロケーションIV.ヒトにおけるBT第2章 発生病態と臨床報告I.BTの病態概説A)発生部位B)侵入ルートC)BTの程度および広がりと時間経過II.動物実験A)概説B)全身性ストレス1. 放射線照射2. 熱傷3. 栄養投与法4. エンドトキシンの投与5. 出血性ショックC)宿主免疫能の低下D)腸管内および腹腔内病変1. 化学変化による腸炎2. 腸管の閉塞3. 化学物質による無菌性腹膜炎4. 閉塞性黄疸5. 膵炎6. 肝切除E)その他III.臨床報告A)概説B)イレウスC)炎症性腸疾患D)外傷および出血E)熱傷F)その他第3章 診断と機序I.診断法A)直接的診断法B)間接的診断法1.血中微生物培養2.血中微生物DNA測定法3. 血中のメディエーター測定4. diamine oxidase(DAO)5. 腸管の透過性変化II.急性反応期BTと慢性期BTIII.BTの発生機序A)腸管の環境変化B)腸管粘膜の防御能変化C)宿主の免疫機能の低下IV.慢性病態A)総論B)閉塞性腸疾患、腸内細菌叢変化C)炎症性腸疾患D)TPNE)慢性臓器不全1.肝硬変2.糖尿病3.慢性腎疾患V.急性病態(物理的化学的障害)A)粘膜防御能障害1.mucosal barrier障害2.腸管虚血3. 腸管毛細血管透過性亢進4.化学的粘膜損傷B)宿主免疫能障害1.マクロファージ機能障害2. プロスタグランジンE23.好中球4.栄養障害第4章 バクテリアルトランスロケーションの臨床的意義I.腸管内細菌と院内感染II.BTと全身感染症A)動物実験B)ヒトにおけるBTとMODS/MOFとの関係III.selective decontamination(SDD) の MODSに対する効果第5章 予防と治療I.経口栄養A)腸管のバリア機能B)経腸栄養C)食物繊維・脂肪酸D)グルタミンE)アルギニンF)胆汁・胆汁酸・分泌型IgAII.グルタミンによるBT予防A)グルタミン代謝1.グルタミン2.腸管粘膜におけるグルタミン代謝3.核酸生合性および免疫能増強効果4.侵襲とグルタミンB)グルタミン投与効果1. 腸管粘膜萎縮抑制効果2.BT抑制効果3.グルタミンの投与方法と問題点III.selective decontamination(SDD)A)動物実験1. SDDの腸内細菌への影響2.腹膜炎3.出血性ショックB)臨床研究1.SDD施行の理由と必要性2. SDDの実際3. SDDの手法4.今後の展望IV.BT治療法(薬物投与)A)概説B)各論1.プロスタグランジン製剤2.成長因子,サイトカイン,ホルモン3.抗エンドトキシン物質4.O2投与(hyperoxia治療)5.xanthine oxidase 系抑制薬剤 ,フリーラジカル消去系薬剤第6章 エンドトキシントランスロケーションI.エンドトキシンについてA)構造および生理活性B)エンドトキシン血症の臨床的意義C)エンドトキシンの生体内での代謝,解毒D)エンドトキシン定量法についてII.エンドトキシントランスロケーションの発生機序A)腸管内B)腸管上皮C)粘膜下層以下III.実験報告IV.臨床報告V.エンドトキシントランスロケーションの予防と治療
目次
第1章 歴史と今日的意義
第2章 発生病態と臨床報告
第3章 診断と機序
第4章 バクテリアルトランスロケーションの臨床的意義
第5章 予防と治療
第6章 エンドトキシントランスロケーション