内容説明
人間の死・歴史の死・文学の死がまことしやかに語られるこのいま、実存の業火を灯しつづけるべく、学術叢書『実存文学』は創刊された。神に魅入られたかのような異貌の抒情詩を綴り、二十歳で事故死した勝野睦人、世界への殺意をこの上なく美しく歌った詩を数篇残し、二十歳で病死した牧野虚太郎の全作品を掲載するとともに、その歴史的意義を解明する数々の論考、そして創作の「いま」を刻み込む詩・小説を付す。「ひつそりとそれさへも道である」―生きる道は途絶えていたのに、詩人は「道」を詩で指し示した。その道の一つを、生き残った詩人たちは「荒地」と呼んで歩いた。私たちもまた、「時代遅れ」の実存を抱いて、一つの「道」を行こうとしている。偽りの言葉・偽りの思想の氾濫するなかで、生も死も偽りかもしれぬと覚悟しながら、なおひたむきに言葉を紡いだ軌跡がここにある。
目次
特集・勝野睦人(解説 勝野睦人について(山下洪文)
アルバム
勝野睦人全集 ほか)
小詩集(透明なる焔(島畑まこと)
約束(田口愛理) ほか)
小説(牛腸ひのえの帰属(海老沢優)
やわらかな角(島畑まこと))
特集・牧野虚太郎(解説 牧野虚太郎について(山下洪文)
牧野虚太郎全集 ほか)
著者等紹介
山下洪文[ヤマシタコウブン]
1988年生まれ。日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程修了。博士(芸術学)。現在、日本大学芸術学部文芸学科専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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