内容説明
恵戒は…鈴虫だったのではないか。それはあまりにも莫迦げた思いつきだった。しかしそう思ってみると、かぐや姫も鶴の恩返しも、いとしい女をなんとか諦めるために紡がれた物語ではなかったかと思えた。
著者等紹介
玄侑宗久[ゲンユウソウキュウ]
1956年、福島県三春町生まれ。慶応義塾大学中国文学科卒。さまざまな仕事を経験したあと、京都天龍寺専門道場に入門。2001年、「中陰の花」で第125回芥川賞を受賞。2007年、柳澤佳子氏との往復書簡「般若心経いのちの対話」で第68回文藝春秋読者賞を受賞。2008年2月より、福聚寺第35世住職。2009年4月より京都・花園大学文学部客員教授(国際禅学科)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
93
一口で言うと美しい本。装丁も挿絵も文体も物語も、すべてが美しい。女性の出家者恵戒は座禅会に出席した裕市に恋心を描く。裕市は鈴虫を育てるのが得意というちょっと変わった設定。出家者として男性を求める気持ちを抑えてきた恵戒は、裕市と愛し合うことで深い喜びを感じる。二人が愛を交わすシーンは美しく、感動的かつ官能的で、読んでいて体の芯が震えて、あたたかくなるのを感じた。二人の愛は一度きりで、続くことはない。別れた後にお互いのことを想うシーンは切ない。物語の背景で鈴虫が鳴いているのは、生と性への賛歌のような気がした。2014/08/24
あさはる
1
内容も装丁も美しく、鈴虫の鳴き声を感じながら読み終えました。2016/07/24
pinoka
1
あっさりした装丁と、最初を読んでの印象から尼僧の半世紀的な話かと思ったら、まさかのエロス的な内容でびっくり。全く予期してなかったので・・・。(でも良く見れば表紙にあしらわれている小さな絵はそれっぽかったですね)生きると言うことの一環、まさに「いとなみ」としての性というのが描かれていて新鮮。2012/08/25
ゆかぽん4649
0
理趣経。2011/02/27




