感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ねじ
4
齋藤史の父も連座した2.26事件を扱ったといわれる兎の歌「白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り」が有名な著者。齢91を越えてのこの歌集にも収められた「兎」の歌が気になる。「兎の舌がふともわが掌に触るるときこの世に知らぬものの多しよ」「まばたき一つを表情としてわが兎声を持たざるものはさびしき」2019/04/19
yumiha
3
斉藤史の最後の歌集。「終末のそろそろ見えて祝わるる敬老の日の紅白饅頭」「携帯電話持たず終らむ死んでからまで便利に呼び出されてたまるか」という意気盛んな老いの歌、「何ものに会釈をされて風の辻 猫族 鬼族 また風の族」というファンタジック・ホラーの歌など、愉しんでしまう。2010/11/21
ishii.mg
1
斎藤史最晩年の歌集。捨て皇子をあはれと謡う遠むかし 捨て皇軍はいかにうたはむ、日出づる国と聞かされ旭川第七師団官舎に育ちし、父が持ちたる小磁石われは胸に吊る極北はつねに揺ぎて遠し、老死は深き黙契にして肯えばひたひたと寧きしずけさありぬ、体内の水が悲しむときありてこの夜いささか我の抒情す、これらの歌がみな90前後の作。2024/12/30