内容説明
部落差別は、「江戸時代の身分制が残った」ものでも、「近代化がすすめばなくなる」ものでもない。いまや部落差別は、立派な“商品”となった!ふくれ上がる身元調査ビジネス。有名人の出自を暴き立てるセンセーショナルな出版物―名著『被差別部落像の構築 作為の陥穽』の著者が、「部落差別の現在」を新視点から照射する!
目次
1章 近代化がすすめば部落差別はなくなる?
2章 まちがいだらけの部落起源論
3章 部落差別とケガレは関係ない?
4章 つくられた「部落の仕事と文化」イメージ
5章 近代は被差別部落民を差別の中で「生きさせた」―被差別部落の国民化
6章 “商品”化される部落差別―身元調査がなくならないわけ
7章 アイデンティティの罠?―「自覚」の呪縛をとく
著者等紹介
小早川明良[コバヤカワアキラ]
特定非営利活動法人社会理論・動態研究所理事・研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
選挙ウォッチャーちだいそっくりおじさん・寺
77
この本は、著者へのインタビューでできている本だが、若干分かりにくい。フーコーなんか引用したりする。しかし、先に文章で書いた本が分かりにくいからこのインタビュー本が企画されたようなので、どれほど分かりにくいのか著書をかえって読んでみたくなる。しかし良い本には違いなく、現在部落差別と関連しているとされる近世までの身分制と、解放令が出た以降の部落差別との内容の違いや従来のイメージの誤りを指摘した重要な本である。惜しむらくはやはりその分かりにくさ。著書に会ってあれこれ質問しながら話を聞いてみたくなる。読む価値大。2021/02/15
田中峰和
4
冒頭、野中広務が官房長官にまで上り詰めた時、総理候補の一人と目された。総裁選を控えたその時、麻生太郎が「あんな部落出身者を日本の総理にはできない」と発言。余りにも有名な話だ。公の席でこのような発言をする人は少なくなったが、今でも何も知らずに差別感情だけ残す人はいる。被差別部落への誤解がいくつか紹介されるが、カムイ伝とカースト制度の例が気になった。カムイ伝では農民の一揆を監視するため、非人に農民のうごきを監視させた様子が描かれるが、これは白土三平の創作。カースト制度と部落差別を同一視するが全く別物。2023/09/15
Ryuoh
3
近世の賎民思想の対象であった穢多非人に対する差別と、現代の部落差別は切り分けて捉えるべき、と筆者。人間という生き物は、自らは安全地帯に身を置き常に異質排除を繰り返す存在。部落の特殊性という事実が欲しいばかりに、部落民は屠畜や皮革、製靴、竹細工産業への従事者がそのほとんど、との誤ったレッテル貼りも然り。こうやって近現代にかけて、前述の職業=賤業=被差別部落の専業とのイメージコントロールがなされ、分かり易い図式化を求めた人々により差別の構図が形成されていったという。>>>続く2019/10/14
Kazuo
2
被差別部落の差別を理解したいと思い読んでみた。どうやらそれは結婚と就職らしい。他者が下した評価判断を差別と感じている。能力が足りないから雇用しないのか、部落出身という属性が負の能力と判断したから雇用しないのかは判然としない。後者は不当な差別なのか。正当か不当かを判断する権利は誰にでもあるようにも思える。しかし不当であると証明する能力は、不当だと主張する側にしかないようにも思う。差別を感じる側が、差別の不当性を証明しない限り差別は無くならないと感じた。差別をなくすには能動的な思考が不可欠に思う。2019/06/29
ミネチュ
2
日本で生まれて日本で育ち、初老を過ぎた今までずっと日本に暮らしていますが、にもかかわらずよくわからないもの、それが被差別部落。 被差別部落とは一体何?何故差別されている?今でも差別はあるのか?などなど。 これまで何冊も読みましたがわからない… そして、「被差別部落の真実」といういかにも私の謎を解明してくれそうな本を見つけました。 でも、この本、一体全体何が書いてあるのかよくわかりませんでした。 「高校生にもわかるようにやさしく」書いたそうですが、初老を過ぎたオッサンには難しすぎてわかりませんでした。2019/05/22