感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
72
「我を忘れる」という言葉が脳裏に浮かびました。矛盾するようですが、我を忘れる時ほど自分を取り戻している時はないかもしれません。〈島に出会うたびに/わたしはその島に/じぶんを ひとりずつ/おいてきてしまう〉や〈花々に 花のつぶやきあふれて わたしは わたしを見失います〉等々、岸田衿子さんの詩には見ている対象に我を忘れる程、心を奪われている様子が目に浮かぶものがあり、詩を読みながらその光景を想像して私も一時、我を忘れました。草木や花が、風や光を受けている様子を詩人の目を通して共有している感覚も心地よいです。2023/05/15
ほのぼの
45
「いそがなくてもいいんだよ」背表紙のタイトルにすでに心が癒される。ポケットサイズの小さな詩集。岸田衿子さんの名は絵本で度々お目にかかっていたが詩集を読んだのは初めて。優しく、温かく、自然があふれている詩だった。木・星・風・光・花…。描かれる世界はどこか超然としている。まるで小人か妖精が見ている風景のよう、なんて思いながら読んでいると「告白」という詩に【羽を二つもがれて はじめて 地面に立ってみました】とある。やっぱり…。(笑)2025/04/30
penguin-blue
28
神保町ぶらり中に見つけた童話屋の詩集シリーズの装丁が素敵で一冊ほしくなり、もともと好きな八木重吉さんの詩集の隣にあったから、という偶然の出会い。子どももわかる平易な言葉で、美しい光景を紡ぎだす。旅に出て、主に自然の美しい風景に触れ、この道を歩いて行ったら日常のもやもやから抜け出して何か素敵なものが見つかるんじゃないか、と感じる時の気持ちに似ているかも。地名や乗り物が出てくるわけではないのだけれど、岸田さんの詩は何となく「旅」の香りがする。たまには詩もいいなあ。このシリーズまた買ってみようか、と思う。2016/12/24
新田新一
20
優しい言葉で描かれた心に染み入る詩が収められています。自然のことを描いたものが多くて、作者のインスピレーションの源は草木や花々、森や林であることが分かりました。自然のものはみんな生を繰り返します。単調だとも言えますが、そこに豊かさと慰めがあります。人間は変化を求めがちですが、変わらないものがあることを知ると心の支えになるのは確かです。そのことを表現した「一生おなじ歌を 歌い続けるのは」が一番心に響きました。この詩に出てくる季節が来るたびに、おなじ歌しか歌わない鳥は、創作に打ち込む作者の分身だと思います。2024/05/19
花々
14
精神が疲れていると感じたときに、こんなほっとする詩集を読むと、トゲトゲしていた気持ちが少しほぐされる。理解しようとして読むのではなく、こちらも詩の中に出てくる自然の一部や、川の魚になったような気持で、ゆったりと世界感を味わった。2016/10/26