内容説明
現在のさまざまなクライシス(危機・岐路)に直面して、それを打開するための新しい社会思想がいま切に求められている。従来の福祉国家の財政難などからの行き詰まり、それを批判して一九八〇年代に台頭したサッチャリズムやレーガノミックスとその思想的支柱となったネオ・リベラル(新自由主義)、そして一九九〇年代に提唱された第三の道等々は、社会福祉が単なる政策上の問題だけではなく、現代の大きな思想的なイシュー(争点)であることを人々に喚起した。本書は、そうした事態を受けて、社会福祉思想が十九世紀から二十世紀末に至るまでどのように展開され、二十一世紀に入った今日どのように「革新」されるべきかを考える試みとして記した。
目次
第1章 福祉国家思想の展開(経済学の誕生・発展と人々の福祉問題―スミスからマルサスとJ.S.ミルへ;ドイツにおける社会国家=福祉国家思想の発達―ヘーゲル、シュタイン、歴史学派;二十世紀イギリスでの福祉国家思想の発達―グリーン、フェビアン社会主義、ベヴァリッジ報告とケインズ主義 ほか)
第2章 アマルティア・センの根源的で包括的な福祉思想(規範的経済学の知的貧困化とロールズ『正義論』のインパクト;センの新しいアプローチ―人間の諸機能(ファンクショニングス)と潜在能力(ケイパビリティーズ)
グローバルな視野の下での社会福祉論―開発と人間の安全保障 ほか)
第3章 公共哲学と社会福祉論(公共哲学の諸潮流と社会福祉論との接点;公共哲学の新しい社会像と「人間‐社会」観―「政府の公・民の公共・私的領域」の相関的三元論と「活私開公」の理念;グローカル公共哲学と多次元的・応答的な「自己‐他者‐公共世界」理解 ほか)
著者等紹介
山脇直司[ヤマワキナオシ]
1972年一橋大学経済学部卒業。上智大学大学院哲学研究科修士課程・同博士課程修了。旧西ドイツ・ミュンヘン大学に留学・同哲学博士号取得。1988年東京大学教養学部助教授。93年同教授。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
-
- 和書
- ハリウッドと日本をつなぐ