感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どらんかー
3
近代史の思想の書。戦国、幕末、明治、大正、昭和と時代が新しくなるにつれてより複雑な思想が入り乱れる。戦国武士、幕末期の志士の共通点や明治と昭和の政治運動の相違点がわかりやすく面白く読めた。2024/02/12
ネコ虎
3
葦津珍彦といえば少し古めの右翼論客。名だけは聞いた程度だったが、図書館でこの著を見つけて読んで感嘆。見掛けやレッテルで判断してはいけない典型例。この本は戦国乱世の武士道の考え方と幕末から明治、昭和初期にかけての政治史、思想史その間に関わった主要人物の評価など多岐に渡るが、どの記述も新鮮で(私が無知だけのことか)歴史の面白さと一面だけからの判断の不可を教えてくれる。強烈な藩と家意識の高杉晋作、桂と西郷の薩長対立、国士としての中江兆民等を描き、また昭和維新と明治のそれと比べての失敗の分析など学ぶこと多かった。2016/02/10
半木 糺
3
戦国期から幕末、明治を経て、昭和に至るまでの戦闘者たちを武士と捉えた上での思想史書。戦国の武士の士道を「あの世」「彼岸」の存在を前提とし、その上で「死」に対して雄雄しく対峙する態度である、とした部分に「武士道研究」としての本書の独自性がある。また右翼・左翼の元祖である頭山・兆民の両者の思想を比較し、「国権伸張」と「民権擁護」は矛盾せず、むしろ同一軌条にあるものとして論ずる。その上で、それぞれの思想の後継者である内田・幸徳の両者に至ってようやく左右の思想的な鋭い対立が生まれたことを記している。2014/05/12