内容説明
いま、ここにある「世界」とは、何か。また、どのようにすれば、それを叙述できるのか―。2022年春にロシア軍のウクライナ侵攻が始まったとき、思い起こしたのは20年前に訪れたサハリンで出会った人びととの会話だった。世界の複雑さを直視し、そこに住むひとりひとりの生活を見つめること、想像すること。そこから、かすかではあるが、小さな光明としての、言葉が、文学がたち現れる。
目次
1 私がサハリンに行ったとき
2 ユジノサハリンスク
3 ポロナイスク
4 オハ
5 二〇年後の世界
6 『フランケンシュタイン』は、世界をどう描いたか
7 ヴィノクロフのこと
8 オタスからの世界
著者等紹介
黒川創[クロカワソウ]
作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境(完全版)』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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東の海月
10
「今」から見る二十年前のシベリア。細かい部分は覚えていないのだが、静かに心を揺さぶられる内容だった。日本に近い国といえば中国、韓国あたりのイメージが強かったのが、そうか、そういえばロシアもか。今頃気がつく…。海に囲まれていると中々実感の湧かないことが多いけれど、誰とでも一つの地球で生きていて、どことでも繋がっているんだな。2023/04/29
turnstiles
0
☆☆☆2025/01/12
ebi_m
0
「ジャッカ・ドフニ」展の関連書籍として。2000年にサハリンへの旅について、20年後に回想する。サハリンの南半分は戦前日本領樺太だった経緯があり、『<外地>の日本語文学選』なるアンソロジーを編んだことのある作家の著者は、「日本」だったころからその土地に住んでいた先住民族や、朝鮮にルーツがある人、及びその子孫に会う。私が見たことのない土地と、その人々の経験と暮らしに思いをはせるとともに、その当時だからぎりぎり聞けた、今は失われてしまった話、経験談はあるのだろうなと感じた。2024/09/30