目次
1(汀;風と茶〓笥;アップライト;目玉焼き;スイートピー;ジンジャーブレッドマン;天井扇)
2(笹舟の猫;ドッキング;りんごとみかん;キャッシュオン;晩翠通り;ハートランド;レモン・ピール;閉じてゆく祖父;社用車;生きている背中)
3(胸郭の螺子;ダイオウイカ;ラッシュアワー;春の肩幅;印籠を出す;かなこさんでしょう;引き出し;竜胆;久しぶりだね)
4(担々麺;サウザンアイランド;王と王妃;古酒;平和園の短歌ノート;グラム・パー・デシリットル;マンナンヒカリ;柚餅子;グロッケン)
5(花火と豆菓子;手のひらふたつ;コイントレー;寄って、笑って;三十六・四度;ペンだこ;焼海苔;AからE;くろまる)
著者等紹介
鯨井可菜子[クジライカナコ]
1984年東京都生まれ。おもに福岡県で育つ。2013年第1歌集『タンジブル』刊行(書肆侃侃房)。「かばん」「星座」を経て、「星座α」所属。「短歌ホスピタル」(2015)、「別冊北山あさひ」(2020)などの編集に携わる。現在、医療系出版社に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hakootoko
4
「編集部にりんごとみかん配られてお地蔵さんのように働く●夜の街に鋼は冷えて水鳥の羽をいっぽん受け止めている●都市に呼吸しつづけること 真夜中の加湿器のため汲む水はあり●蛍光灯またたき止まぬ夕暮れに報告一つしそびれている●ダブルベッド用の布団をとりこんで春の匂いの一本背負い●五年も経てばわからなくなる君の匂いパジャマの腕に鼻おしつける●博多弁かわいいねってうるさいわ詰めてやろうか梅が枝餅を●やり残したことを思ってみぞおちに甘納豆がこぼれる夕べ」2024/10/25
トマス
1
生活していれば誰もが経験する、でも忙殺の中に忘れがちな心の形を短歌で綺麗に収めている。家族との時間や出版社で働く情景を歌にしていて、気持ちのひだが素直に出ている。奇をてらわず定型を大事にした丁寧な詠みは、何気ない景色を特別な瞬間にしていて心に残る。2023/06/19