内容説明
「小山さん」と呼ばれたホームレスの女性が遺したノート。80冊を超えるノートから抜粋した、小山さんが生きた日々の記録。8年かけて文字起こししたワークショップのメンバーによるエッセイも収録。
目次
小山さんノート(1991年1月5日~2001年1月31日;2001年2月2日~4月28日;2001年5月7日~8月21日;2001年8月22日~2002年1月30日;「不思議なノート」2002年9月3日~10月4日;2002年10月30日~2003年3月16日;2003年7月3日~2004年10月12日)
小山さんノートワークショップエッセイ(小山さんとノートを通じて出会い直す(吉田亜矢子)
決して自分を明け渡さない小山さん(さこうまさこ)
「ルーラ」と踊ること(花崎攝)
小山さんの手書きの文字(藤本なほ子)
沈黙しているとみなされる者たちの世界(申知瑛))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
83
小山さんは、私より一世代上だと思います。おそらく、日本の将来に希望を持ち、時には危機を感じながら若い頃は過ごしたのではと想像します。このノートでは、ホームレスになったきっかけはよくわかりません。ただ、小山さんには見えていた世界が、私には迷宮に迷い込んでしまったように感じました。辛いと言うより苦しいが本音です。日記の部分は2段組です。小山さんのメッセージです。私たちは何ができるのだろう、そして何をしたらいいのだろう。合掌。2024/01/24
とよぽん
61
高橋源一郎さんが、ラジオ番組で紹介した本。小山さんという女性がホームレス生活を続けながら日々書き残したノートの山。それを彼女の死後、有志の人たちで文書に起こし書籍にまとめたもの。ほとんどお金の蓄えもないその日暮らしの小山さんは、決して福祉や医療、生活保護などに助けを求めない。保護には干渉がついているし、福祉も医療も彼女にとって不本意な処遇や手当てを押しつけてくる。彼女はそれらに縛られない自由な生活を追求したのだった。辛い、とても苦しい読書の時間で、耐えがたい重苦しさで圧倒してくる。2024/05/08
竹園和明
51
超達筆なホームレス・小山さんが遺した日記。物事の捉え方、価値観が人によって違う以上、ホームレスを続ける事の是非等を論じても全く意味がない。小山さんには小山さんのイズムがあるのだ。書かれた文章を読むに、小山さんはかなりの教養をお持ちの方で、また自分の意志を尊重したい意識が強く自分を曲げてまで人と関わる事を良しとしない人。辛く苦しい毎日を送りながらも彼女はそれを貫き通し、日々を生きたのだ。涙の粒で綴ったような一文一文が読み手の心を痛めつける。しかしここには、生きる事の超然たる意味がしっかり記されている。2024/05/11
こばまり
49
研究書には丸山里美氏の『女性ホームレスとして生きる』があるが、本書は当事者が自発的に残した膨大な記録としてその価値が計り知れない。女性が路上で尊厳を守り生きていくことの過酷さが生々しく迫り、自身の来し方行く末も重ねて読んだ。2024/05/25
なつ
49
友人が携わった本。SNSのように誰かに見せるために書かれたものではない日記。それを見ず知らずの私が読ませていただいていいものか…という想いが最後まで消えない内容。全て現実の事。一人の女性が実際に体験・経験してきた人生のあれこれ。だから読書中『苦しい』なんて言っちゃいけない、そんなの失礼極まりないと分かっていても、本当に苦しくて、なかなか読み進められなかった。読了後の今、そしてきっとこれからも色々な想いが私の中を駆け巡り続けると思います。読んで良かった。友人にありがとうと伝えたいです。以下コメント欄に続く。2024/03/22