内容説明
アジア・太平洋戦争の敗戦は、日本に平等化をもたらしたのか?不平等・格差が拡大しつつあるいま、戦争や暴力による社会の流動化を正当化する言説に対して、計量分析というデータの力は、どのような可能性を提示できるのか。「特集1」では、大規模な社会調査データを駆使して、人々の不平等感や不公平感といった“感覚”を可視化する計量歴史社会学の試みを論じる。「特集2 二一世紀における空襲の記憶と表現」では、体験者の証言保存活動、博物館展示、白黒写真のカラー化、アニメ映画制作といった実践を通して、空襲記憶の継承と表現について多面的に考究する。
目次
特集1 計量歴史社会学からみる戦争
特集2 二一世紀における空襲の記憶と表現(乳幼児期被爆者による原爆体験の構築―「愛知自分史の会」の事例から;戦後日本の政軍関係と自衛隊出身政治家の消長―隊友会機関紙『隊友』の言説分析を中心に;戦争表象と世代の記憶―福間良明『戦後日本、記憶の力学』;シベリア抑留体験と日ソ戦争という前史―富田武『シベリア抑留者への鎮魂歌』、『日ソ戦争 一九四五年八月―棄てられた兵士と居留民』、アンドリュー・バーシェイ『神々は真っ先に逃げ帰った―棄民棄兵とシベリア抑留』;「戦中派」と映画―山本昭宏編『近頃なぜか岡本喜八―反戦の技法、娯楽の思想』「戦い」への欲望を解剖する―足立加勇『日本のマンガ・アニメにおける「戦い」の表象』;ファシズムの理解から右派ポピュリズムの検討へ―田野大輔『ファシズムの教室―なぜ集団は暴走するのか』;テクノロジーによる「記憶」の再構築と戦争社会学研究―庭田杏珠・渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』;趣味からみた戦争の現在―吉田純編『ミリタリー・カルチャー研究―データで読む現代日本の戦争観』;軍隊の人的資源政策―合理主義、文化主義、構造主義)