感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
41
コロナの問題として手に取った読者には外国の抽象的な話にみえ、著者を知っている読者にはテーマがはっきりしていて分かり易いが中途半端に現実的な緩いエッセイにみえる。後者として読んだつもりですが、前回よりも論旨がはっきりしています。コロナが顕在化させた社会の種々の問題をこの際解決しようというのですが、これには反対です。アガンベンの言説に否定的な様に、自由を制限して設計主義的に変えられるという論調は日本では大澤真幸が主張していましたが、中国を念頭にコロナの犠牲者が少ない社会が良い社会だという判断は間違っています。2021/09/18
燃えつきた棒
33
ジジェク先生、いろいろ言っているが、メルケル首相の言葉ほどには、胸に響いてこない。 たぶん、いろいろ言い過ぎるのだろう。 この薄さで1800円、あまりコスト・パフォーマンスがいいとは言えない。 やはり、図書館で借りて読むべきだったかも知れない。/ 2021/08/10
ケイトKATE
29
新型コロナウイルスによって表出した問題について、スラヴォイ・ジジェクが分析した続編。個人的に、『マトリックス』に例えた人類の選択が印象に残るが、圧巻はフロイトの夢判断のラカン的解釈にジジェクがさらに解釈した警告である。一般的に夢を見ず現実を見ろと言うが、その現実は言った本人の願望が含まれている。しかも、コロナ禍で現れた現実を人々は見ていないことをジジェクは指摘している。さらに、ジジェクはコロナは人類が自然を破壊したことで起きたと厳しく批判しており、私たちは改めて日々の生活を考え直す必要がある。2022/11/11
原玉幸子
10
哲学は宗教を包含し、社会政治も大事なのが理念であることでも然り、其々の逆、例えば哲学を宗教的には思考しませんし、同じく哲学を社会政治のシステムで捉えることは出来ないことでは、哲学は其々に対する必要条件と言いたくなります。コロナに関わる世界の動向だけでなく、社会政治に関し、(最近は「剥き出しの(欲望)」との言葉使いが見られる中)特に補遺で、トランプの「猥褻性」との表現を用いての問題指摘が核心で、自身のもやもや感を頭のいい人に的確な言葉で表して貰って安心する、大きな頷きがありました。(◎2021年・春)2021/05/07
Iwata Kentaro
8
スロヴェニアの内田樹(笑)、スラヴォイ・ジジェク。正直、人文系の方が語るコロナは読む前にちょっと怖じけるのだが(すごいものが飛んでくることも多いので)、ジジェクのそれはまったく安心して読めた。もちろん、難しくてよく分からんところは多い。特にラカンは分からん(笑)。が、執筆時点でプーチン、トランプ、ボルソナロを一刀両断したジジェクの先見の明に敬服するばかりである。ヘーゲル、マルクスからCOVIDを考える、というのはアリだと思う。2022/03/28