感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roatsu
14
珍しい海軍飛行専修予備生徒として訓練を終え、沖縄を巡る末期の戦いで戦闘機搭乗員を務めたご父君の残した手記。同時期に海軍予備学生第14期が実戦に出たこともあり、いわゆる本チャンの海軍士官の主観とはやや異なる、学窓から海軍に入った者ゆえの感性が阿川先生の雲の墓標を少し想起させる。手記は天号、菊水作戦発動の頃と思しき南九州の海軍基地で米艦載機と凄絶な対空戦闘を行うところから始まり、零戦での夜間沖縄空襲などを経て短い戦歴の一部を生々しく綴るが、肝心の部隊名、日時、場所が明記はされていないので事実か体験に基づく迫真2020/07/11
Ryo
4
これだけのものが世に埋もれずに済んで本当に良かったと思う。学徒動員で零戦搭乗員となった著者が、自らの体験を終戦後8年経ってから人知れず記したもの。戦後75年目の今年、その息子によってやっと刊行されたのが本書だ。物語は昭和20年の南九州にある航空基地から始まる。ある日、平和な基地が米軍の大編隊による攻撃によって地獄と化す。その日を起点として戦況は一気に悪化し、のどかな日常は一変していく。これまでいくつか戦記物を読んだけれど、これほど戦場の臨場感と当時の人達の心情が伝わってくるものは少ないと思う。2020/12/31