感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
105
30年前テレビで天安門事件の映像を見ていた。戦車が公園のバリケードをなぎたおすシーン、逃げるデモ隊、白いシャツの男が戦車の前に立ちはだかる、去年の香港のときも同じで今だその犠牲者数は分かっていない。そして中国ではこの天安門事件自体なかったことになっている。この本はこの事件の真相とその原因がどこにあったのか、その後明るみになった情報が書かれている。特に白いシャツの男が戦車の前に立っている映像について興味深いことが書かれていた。図書館本2021/06/21
まーくん
92
あの天安門事件から既に31年。当時、NHK特派員として事件を”目撃”した著者が顛末を語る。89年4月、胡耀邦元総書記の死を受け、香港特派員から北京に派遣される。追悼式を巡る学生の抗議活動。その受け止めは理解を示す趙紫陽総書記と李鵬や保守派長老の間で異なった。趙の北朝鮮訪問の留守中に出された「動乱」社説の扱い軸に事態は混沌としていく。しかし最高実力者鄧小平の腹は決まっていた。戒厳令施行、6月4日未明、解放軍による「動乱鎮圧」は実行される。著者ら外国報道機関は不覚にも軍の陽動作戦により広場から締め出される…。2020/07/27
アナーキー靴下
20
天安門事件当時、NHK特派員として現場を目の当たりにした著者による記録に、体験と資料分析をもとにした「真相」の考察を加えたもの。著者の考察ストーリーに沿いつつ、時系列でまとめた構成は読みやすい。著者は中国共産党内部の権力闘争が事態を悪化させた根本原因と考えているためか、本書の重点も共産党内部の動きに置かれているように思う。必然的に難しい漢字の登場人物が増えるため、冒頭のイラスト付き人物紹介は本当に有難かった。天安門事件に至る歴史の流れはつかみきれなかったので、近現代史を改めて勉強し直す必要があるなと反省。2020/09/11
サラダボウル
15
1989年6月4日、中国で起きた民主化運動の武力鎮圧事件。当時NHKの特派員として現場を目の当たりにした筆者が、時系列に見聞を伝える。学生への寛容さで、失脚した人物の死去。当時のトップも学生と民主化を援護していたが、本音を見せない党内の中、失脚する。折しも中国ソ連関係改善のため、ゴルバチョフ大統領がくる。ソ連の政治改革、五四運動の時期もある。そして、6月4日武力制圧開始。市民に銃口が向けられる。群衆は怒り暴徒化する。外国のマスコミは当局の演出に翻弄される。撤退交渉の事実。30年前の亡霊は生きている。2020/08/29
紫の煙
14
著者は天安門事件当時、現場に居合わせたNHK記者である。きっかけとなった胡耀邦の死から、趙紫陽の失脚へとつながる共産党指導部の権力闘争が背景にあったと分かりやすく説明される。映像が残る有名な「戦車男」は、戦車は人をひかないとアピールする当局の自作自演と推測している。現場に居た人だけに、説得力あり。2020/11/10