内容説明
名人・三遊亭円朝は幕末に生まれ、文明開化の時代に生きつつ、「怪談牡丹燈篭」「真景累ケ淵」など現代でも高座でかけられている著名な噺を数多く創作した。当時の観客に絶大な人気を博した様々な噺の内容と彼の人生・思想を解析することにより、当時の民衆世界に分け入ってその心性を明らかにしていく。これまでの国文学・演芸論とは全く違う歴史学(民衆史)から怪談・人情話をとらえ直す。
目次
第1部 歴史学の素材としての三遊亭円朝(個人史・言語論的転回・主体;天保生まれの三遊亭円朝―描かれた人生)
第2部 文明開化という状況と民衆芸能(文明開化という状況(構造)とAIEフィールドとしての寄席
文明開化期の寄席と芸人)
第3部 作品解析(「真景累ケ淵」;「怪談牡丹燈篭」;「塩原多助一代記」;「文七元結」)
第4部 記憶の近代(暴力の記憶;江戸―町の記憶;差別の記憶;北関東の記憶)
著者等紹介
須田努[スダツトム]
1959年生まれ、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、明治大学情報コミュニケーション学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
102
NHKBS『英雄たちの選択』で三遊亭圓朝を特集した日に著書が出演されておられたので探して手に取る。歴史の中で人物史をどう捉えるか、風俗文化の中での考察の進め方などは、単なる落語ファンからするとなかなか難解であり、申し訳ないが演目の紹介のところ以外はパラパラと。2019/10/04
imagine
6
NHK「英雄たちの選択」で著書を知る。文明開化により明治政府から怪談噺を禁じられ、廃刀令や仇討禁止でそれまでの価値観が変化した時代。従来の作風を捨て、教訓めいた「塩原多助一代記」を創作「してしまった」円朝の心境に迫った分析は鋭い。一般的な時代背景よりも、三遊亭円朝という人物の周辺環境や心情に重きを置いた手法で、一個人から激動の時代を読み取ることに成功している。民衆世界との接点が弱いためか「死神」や「心眼」などの名作には触れない。タランティーノやたけしの名前も一瞬登場。作品批評のようなものがあれば読みたい。2019/08/23
とりもり
0
円朝の人となりとかの本かと思ったら違った。名人と謳われた大落語家だが、語りの音源は残っておらず、もっぱらその創作落語で知られるとおり、その作品群の創作背景と当時の世相などが細かく分析されている。正直、「文七元結」以外の作品を聴いたことがなかったが、その演劇的構成には非常に興味を惹かれた。長すぎて通しで語られることもないだろうし、先ずは円朝全集を読んでみようかな。代表的な作品の粗筋も理解できるしオススメ。★★★★☆2022/02/13