内容説明
東京郊外に建つ「ハイツひなげし」は、10室の小さなアパート。住民たちは一見ばらばらに見えて、8号室の小田島さんにいく度となく救われている。ひとは、ときによわくて、そしてやさしい―。OZmagazine元編集長、初の書き下ろし長編小説。
著者等紹介
古川誠[フルカワマコト]
1975年埼玉県生まれ。大学時代から小説を書き溜め、現在はスターツ出版に在職。オズマガジンの編集長時代に自社小説投稿サイトにて連載していた小説「りんどう珈琲」が2015年にクルミド出版より書籍化。「ハイツひなげし」は2作目の長編小説となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
江口 浩平@教育委員会
24
【小説】読書のすすめの小川さんが薦めているということで手に取った一冊。小説は自分の感性に合う合わないの部分がハッキリと出てしまうためドキドキしながら読了。個人的には直近で読んだベストセラーの泣ける本よりよっぽど心がほっこりして良かった。小田島さんのように、いつでも気にかけてくれ、会えば自分を包み込むように全てを許してくれているような穏やかさをもつ人は稀だなぁと思う。だからこそ、少しでも自分もそうありたいなと感じる。2019/02/23
わいほす(noririn_papa)
10
何かしらの問題を心に抱えながら小さなアパートで一人暮らしをする10人の話が9篇。小田島さんと呼ばれる一人の男性はすべての物語に登場しながら、彼自身の物語はない。しかし、不思議な魅力を持つそ彼は、それぞれの住人とのさりげない交流により、相手の心に少しの潤いと笑顔を与えてくれる。それぞれのが新しい一歩を踏み出すきっかけになる。では、なぜこの男自身の物語がないのだろう。もしかすると、何年か後に集まった住人たちが彼の話をした時、大家さんがこう呟くかもしれない。あそこはずっと空室で、そんな人は住んでなかったよ、と。2019/04/06
Yuko
10
<東京郊外にあるアパート「ハイツひなげし」からほど近い遊園地のヒーローショーで、小田島さんはヒーロー戦隊の「ブルー」を演じている。小田島さんはこのアパートの住人たちの、そしてみんなの、ヒーローそのものだった…。 > 2018年 前OZマガジン編集長、古川誠さんの2冊目。一章に一人の住人に纏わるエピソードが描かれ、淡々とした語りの中に温かいものが流れる。エピソードは完結せずとも、彼らのこれからが、自らの日々の営みが続く感覚と重なって余韻を残す。最終章、書店員の話、そして野球の章が好きだった。 2019/01/15
あんこ
5
サイズ感がすごく良い。そして古川さんご自身のあたたかなお人柄が文章を通して伝わってくる。読みやすくて2時間もかからず読了。小田島さんの物語は語られないところが良かった。2019/12/03
まつけん
5
東京郊外の小さな町にある家賃5万円のアパートに住む(予定含む)10人の物語。1人1話の連作短編仕立てで読みやすく、その全ての話に登場する8号室の小田島さん(40代・男性)の自然体な感じが心地よく、とても気持ち良く読了。「そこにあったのは正義か悪かとかじゃなくて、ただの選択だったんじゃないかって。自分の頭で考えて、自分で選び、自分で決める。そうやって生きている。それが集まって世界ができている。」雑誌編集者でもある著者の2作目とのこと。小田島さんと「東龍」のラーメン食べに行きたいなぁ…2019/01/07