内容説明
兄弟は時代の運命に引き裂かれ、喜びと悲しみが爆発する―圧倒的な悲劇と喜劇の全一巻!ノーベル文学賞候補・余華。世界を騒然とさせた傑作、待望の復刊!
著者等紹介
余華[ユイホア]
1960年中国浙江省杭州生まれ。80年代中ごろから実験的手法による中短篇作品で「先鋒派」作家の一人として注目を浴び、91年『雨に呼ぶ声』(アストラハウス)で長篇デビュー。92年発表の『活きる』(中央公論新社)が張芸謀監督により映画化され話題を呼ぶ。『兄弟』は中国で05年に上巻、06年に下巻が発表され、またたくまにベストセラーとなり、フランス「ル・モンド」誌による「第二次大戦後の世界で最も影響力のある小説100選」に選ばれるなど、世界的にも高い評価を得ている。98年にグランザネ・カブール賞(イタリア)、04年にフランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」受章
泉京鹿[イズミキョウカ]
1971年東京都生まれ。フェリス女学院大学文学部卒。北京大学留学、博報堂北京事務勤務を経てライター、メディアコーディネーター、翻訳者として16年間北京で暮らす。現在はロサンゼルス在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
16
両親の再婚によって「兄弟」になった二人の物語。本書については多くの人が「極端から極端へ」という言葉で語る通り、文革の狂気から改革開放という欲望の狂気の時代が描かれるとともに、善良で誠実な兄と、粗野で下劣な弟の極端なコントラストが強烈である。特にその弟の方がメインになるため、欲望に満ちた下劣な話なのだが、それをリアリズムに踏みとどまらせる著者の理性と品性、そして日本語として「読ませる」作品にした訳者には本当に頭が下がる。読み出したら止まらなくなるから、ある程度まとまった時間の確保が必要な本。2024/01/04
spatz
15
とにかく長いため、読むのに根気がいるだろうし、とにかく表現がすさまじく下品なので😏読む人を選んでしまうかもしれない。わい雑なものが好きな人へ、という宣伝文句も見たような気がする。辟易するような話の中で、何度もなんども声だして笑う場所、うならさられた。中国語はわからないけれど、翻訳を全く感じさせない、素晴らしい文章。近くて遠い国中国。文革の悲惨な歴史、流された血。その後に来る経済中心の、しかしいきいきとした混乱期。 近くて遠い国、中国。文学は国と国をつなぐものかもしれない。果てしなく長いけれど面白かった!2022/05/29
遠い日
9
とんでもなく暴力的な熱量が迸っている。文革に殺された父。それによって一家離散しなくてはならなかった義兄弟、李光頭と宋鋼を巡る物語。猥雑で強かで、下品で軽薄で、それなのに目が離せないまっすぐなものに貫かれているのは否めない。劉鎮の街のゴシップ好きな人々のパワーと喧騒も物語の背景を固めている。恋に、仕事に、全身全霊で立ち向かう李光頭の直情径行な言動も、己を信じる馬鹿みたいな自信も、渦巻く欲望のままに突っ走る快感を読み手にも与える。対して宋鋼の零落がやるせない。兄弟愛の深さ、大きさも桁違いの悲劇であり喜劇だ。2021/10/12
かながわ
7
40年…その中で人は酷くなり優しくなり賢くなり軽薄になる。魂は生臭いものと分かっていてもやりきれない。2022/07/04
トト
5
中国原作上下巻を1冊にした1000ページに亙る長編小説。上海に近い町を舞台に、文化大革命から超高度成長期を生きた血の繋がらない兄弟を主軸に描かれる。陽気で陰湿、軽くて重厚、ゲスで荒唐無稽なエピソードの乱列。大きな中国なら有り得るかもと錯覚させられ、真実と虚構の境界を彷徨う。日本の作家には書けない逸品だと思います。2021/08/13
-
- 和書
- 親子で探究ものづくり