内容説明
薩摩藩大坂蔵屋敷。「昆布や薬種を売り買いして、民百姓を楽にしてやりたいのだ。清国人、薩摩人、そして、そなたらが薬をもたらす他国の者どもも、安く良薬を得られる。どれほど多くが助かるか」破綻寸前の財政改革に挑む薩摩藩家老・調所広郷が富山売薬薩摩組の密田喜兵衛に蝦夷昆布の密貿易を持ち掛けた。最後に調所は声をひそめて所望した。「一服で確実に死ねる毒薬を用意してもらいたい」。日本開国史を塗り替える衝撃の人間ドラマが始まる!
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
静岡市出身。1977年東京女子大学史学科卒。出版勤務などを経て2003年に『桑港にて』歴史文学賞受賞。09年に『群青』で新田次郎文学賞、『彫残二人』で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アイシャ
33
名高い富山の薬売りは、元々立山の修験者が自分のための薬草を集めたことが始まりだったとか。薬の詰まった箱を各家庭に置いて来るスタイルは、『先用後利』というんだそうだ。先ずはお互いの信用あっての商売方法。高価な薬種獲得に苦労する富山の薩摩組が、その薩摩藩の家老調所から、船を持ち昆布を函館で買い付けて鹿児島までの運搬を依頼される。その対価は琉球からの薬種との交換。それは当時幕府から禁止されていた抜け荷。高価な薬を一人でも多くの人に届けたい、能登屋主人の喜兵衛はその危険な仕事を引き受けるのだが。いい作品だ。2023/12/31
パラオ・スパニッシュフライ
12
幕末後期の富山藩。諸国を薬売りとして行商している組の人達。薩摩組の嘉兵衛は、薩摩藩の家老調所広郷から昆布の密輸を持ちかけられて密貿易にてを染める。幕末前夜の各藩との関係や当時の薬売りの実態が細かく描かれており楽しく読めました。大きな歴史には名が残らないですけど、歴史の1ページを作るために動いていた江戸時代の人々の暮らしがよくわかる物語でした。2025/04/20
newman
9
面白かった。人の役に立つのが生きがいだとする富山の薬売りの話。昔、うちにも富山の置き薬があり紙でできた風船をもらったりしていた。いつの間にか自宅に売薬を置くようになって富山の薬売りは来なくなってしまったが。現在、NHKのBSで「篤姫」を再放送していて調所広郷が出てきた。当然のことだろうが本書の通りの人と思われた。薩摩組は遠い所を割り当てられ大変だったのがよく分かった。ずっと歴史小説と思って読んでいたから最後の主人公が亡くなった後のあの世に行った部分はない方が良かったかな。2024/02/24
どきん
3
薩摩藩担当の富山の薬売り。薩摩藩の財政立て直しのために調所広郷から抜け荷を依頼される。抜け荷が発覚し全責任を負って切腹する調所。今の政治家は記憶にございませんと逃げる、う〜ん。でも、こんな人たちにしか投票してない国民にもう〜ん。うちにも富山の薬売りが来て紙風船をくれた、懐かしく思い出した。2025/03/29
好奇心
3
富山売薬薩摩組とは、題名から色々想像しながら読み始めた、クスリと昆布の密貿易から両藩の絡みが始まった、富山と薩摩、遠いですね、命がけの行商だったのでは、薩摩藩の財政立て直しを担当した調所広郷、最後は藩主の座を巡り、斉彬と久光の対立したお由羅騒動という有名な事件に発展してしまい、広郷の自害で決着した、富山藩でも富田兵部という人材が切腹に追い込まれた、武士の責任の取り方は死しかないのか?近代へのスタートに起きた事柄である、読みごたえがあった・・・ 2023/12/18
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