出版社内容情報
いい雑誌です! だって、わるい雑誌を出す筈がない、国立出版所が
1923年、パリから戻った詩人は、総合芸術誌「レフ」を組織する。同人にブリーク、アセーエフ、トレチャコフ、ロトチェンコ。創刊号には、不実の恋人リーリャとの「自発的監禁」中に書き上げた『これについて』が全文掲載される。日本翻訳家協会特別賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たーぼー
53
これについてとは何についてか、を語る男の顔をよく見るがいい。全露中央執行委員会に回状を送りつけかねない身の程知らずだ。スターリン体制に『ことば』というナイフと弾丸を用いた怪物だ。時には甘美なバラードを口ずさむ男だ。『頑張れ未来派の諸君!』だって?未来派か知らないけど、うん、頑張るよ。昔々、ロシアに一人の詩人がいたんだとさ。狂気と愛に燃えていたんだとさ。世界一周の旅に出るも、パリのホテルで旅費スッカラカンになったんだとさ。仕事部屋でピストル握り頭ブッ放したんだとさ。倒れた男の上を朝日が照らしていたんだとさ。2017/04/17
Y2K☮
28
今月のポエム。複雑怪奇にねじれたり壮大な方向へ盛られ過ぎたりしているけど、つまりは「愛だろ、愛」という話か。確かにロシアの誇る詩人プーシキンは決闘で命を落としたのだ。愛と誇りを守るために。マヤコフスキーもあるいは彼自身の運命というか美学と矜持の行く末をそこへ重ねていたのかもしれない。でも相手のダンテスを焚き付けたのはプーシキンを良く思わない貴族連中だという話だし、愛する人を巡る男と男の決闘という美しいイメージと実態は案外裏腹だと思った。太宰治「女の決闘」を思い出す。ともあれ、ぜひ新訳でも読んでみたかった。2019/03/03
Mayuzumi
20
詩人はリーリャに電話を掛ける。番号は6710「建物に穴をうがち、畑のようにミャスニーツカヤ街を掘っくりかえし、ケーブルをひきちぎり、電話番号は弾のように交換嬢めがけて飛んだ」彼女には夫があった。詩人と夫婦、三人で暮らしたこともあった。詩人はこの詩を、病のことばが語るバラードだと書く。オスカーワイルドの詩。決闘で散った二人の詩人。ダンテス。隣人のバリシンさん。熊になった詩人の魂の彷徨。プレスニヤの自宅から、パリはロトンドの喫茶店で管をまく。愛が彼をして唄わせる、高らかに、そして銃弾の死を何度も預言する。2017/02/08
cockroach's garten
14
何物にも縛られない純粋な愛を歌った悲劇ではない包まれたもののない本心からの愛。家庭などの諸々の世相を掻っ切って、マヤコフスキーは感じるままに走る。愛する人の元へ。2018/05/31
えっ
3
マヤコフスキーの低くて大きな声で朗読されるのを聴いてみたい、特大の言葉のエネルギー。アニメーションみたいに鮮やかな視覚描写は楽しい。他で見たことのないコラージュが載っているのが良かった。この叢書シリーズ少しずつ集めたいなと思う。 …なんかただの大ファンなので、アホみたいな絶賛しかできないんだけども2022/01/29