内容説明
1980年代の荒川河川敷にジェノサイド被害者の遺骨を探し10年にわたって、のべ150人に聞き書き調査―市民の手で掘りおこされた記録集(1992年刊)にその後30年の歩みを加え、新たな装いで復刊!
目次
第1部 荒川河川敷に探して(埋め戻された穴―荒川土手に埋められた遺骨をさがして;すえられた機関銃―旧四ッ木橋での虐殺;事件の現場を歩く―隅田・寺島・吾嬬・亀戸;疾走する軍隊―総武線以南;韓国を訪ねて)
第2部 荒川土手を越えて(地域に根ざすことを願って;河川敷での建立を目指して;土手下の追悼碑;その後の活動)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
99trough99
26
本書は、関東大震災直後のジェノサイドについて調査を続ける団体が出版した本の再録、及び、出版後の同団体の活動報告で構成されている。本書を手にしたのは、中央防災会議の報告書にすら記載されている本事案を「公記録がない」として一向に認めようとしない政府の姿勢を素朴に不思議に感じ、では自分で勉強しようと思い立ったことがきっかけ。荒川河川敷での事案一つとっても大変複雑な歴史の糸をほぐすかのような丹念な調査が大変印象的。この、鬼畜の所業に目を背けてはならない、歴史に学ばねばと痛感した。一度ぜひ、追悼碑にお参りしたい。2023/09/09
ミノムシlove
9
言葉が見つからない。外国に出稼ぎに行った家族が帰ってこないまま月日が流れる。そんな、祖国に残された人たちが一体何人いた事だろう。「関東大震災における朝鮮人虐殺」、今年の政府見解は『記録なし』で封印された。何が恐ろしいかと言って、まるで快挙を成し遂げたかのように喜々として虐殺を語る市井の人々。家に帰ればいい夫であり父親である、だから彼らは悪人のはずがないというのはまやかしである。この国で何が行われたのか、ジェノサイドに目を向けない政府に戦慄する。2023/11/12
二人娘の父
7
1982年に行われた遺骨発掘作業を通じて、当時の貴重な証言を収めた前半、その後事件現場近くに追悼碑を建立する経過を収めた後半からなる。証言の数々には言葉を失う。類書を読んできたと思ったが「証言」にはあまり触れてこなかった。あえて避けていた訳ではないが、意識して自ら接する機会をつくるべきであることを反省する。鳳仙花が虐殺された朝鮮民族を象徴する花として心に刻まれる(余談だが沖縄では「てぃんさぐ」である。どちらも歌がある)。毎年第一土曜日に現場で追悼式が開催されているとのこと。今年はぜひ参加したいと思う。2024/05/14
チェアー
7
歴史を消そうとする勢力がある。歴史を隠蔽しようとする人たちがいる。その隠蔽に成功したなら、歴史はなかったこととされ、人を殺したことすら当然だったと言い切る世の中がやってくる。 そうしないため、そうさせないために歴史を知り、語り継ぐことが必要だ。 2023/10/26
kitakama633
4
例えば近所の知り合いが、学校の友人が、同じ職場の人間が、ひとたび何かあれば、同じことが、私や私の家族を殺すかもしれない。この恐怖はとても大きくて、この恐怖をいつも背中に背負って生きている、そんな感じです。そして、私の子どもも同じように語るのです。俺たちは何かあったら同じように殺される、そういう恐怖を息子から言われて、あぁ、私は何も変えることができなかったんだな、と思いました。私たちは朝鮮人として、殺される側の人間だ、ということを乗り越える安心感を得るための活動を継続しなければならないのです。2023/02/18
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