内容説明
作家・吉田知子の小説選集第三弾。巻末には町田康氏が考える「そら」への問いを収録。
著者等紹介
吉田知子[ヨシダトモコ]
1934年浜松生まれ。名古屋市立女子短大経済科卒業。1970年「無明長夜」で第六三回芥川賞を受賞。「満州は知らない」(女流文学賞)、「お供え」(川端康成文学賞)、「箱の夫」(泉鏡花文学賞)ほか作品多数。2000年、中日文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
49
日常が文章の力で異界と化していく。著者の作品ではその傾向が顕著だが、今回はそれが特に並外れて力を振るっているように感じる。特にそれが感じられるのは「箱の夫」「犬と楽しく暮らそう」「幸福な犬」等。読んでいるうちに日常どころか、人間とその他何かわからないものまでのあわいまでどろどろと溶け出していく。以前読んだ『家畜小屋』と似たような気味悪さを覚える。その他にも「静かな夏」の不気味な狂気や「艮」「穴」の様な怪談めいた話まで個人的にぴったりと合う話ばかり。読んでいる間、始終不安感に苛まれる、そんな読後感だった。2014/09/29
はちてん
35
気持ちが安定していないときに読むと猛毒、吉田知子。安定していても何かに感染するかな。この短編集はイヌを鍵にしている作品が多く、頗るつきの犬好きには微妙な読後感。現実的で非現実世界かもしれない物語は筆力によって転ぶ先が変わると思う。吉田知子の無駄をそぎ落とした文章には一気に持っていかれ疑心暗鬼さえ起きる。読後の不安感を大いに楽しむ。2014/10/31
メタボン
30
☆☆☆☆ 怖いもの見たさという言葉がこれほど合う作家はいないのじゃないか。禍々しさに震える作品が多かった。既読の「箱の夫」はどこか飄々とした雰囲気。最も訳のわからない「そら」。宿泊施設の中にいる人物達がまるで囚人のように感じられ異界感が漲る「ユエビ川」。あみだぶやおいおい狂気に満ちた西方浄土への旅と山狩り「艮」が最も怖かった。アナに浸食されていく「穴」。一緒に暮らしているのがとても犬とは思えない「幸福な犬」。2022/08/20
くさてる
19
非常に不気味。居心地が悪い。なぜ自分は時間を費やしてこんなに気持ちが悪いものを読んでいるのだろうと思う。思うのに止められない。ここに存在している人々のグロテスクな心情や、何度目覚めても抜けだせない悪夢のような世界や、ねっとりと絡みつきもたれかかっている部分から融解して糸を引いているような人間関係の描写や、小学生の女の子の目に映る世界を解剖学的正確さで表現する構成力には、ただもう降参するしかない。間違いなく傑作ぞろいの短編集ですが、再読する時には体調と相談したいです。2015/03/14
aoneko
15
つるつる、とはいけない、安定の吉田知子・・・というべきか、どのお話も居心地の悪さでは一等忘れがたい。窒息しそうな空気と、いつそうなった?と言いたくなる、ねっとりと、でも現実でなくもない情景からイヤな展開へのナチュラルな横滑り。犬と人との寝ぼけた会話や、夫婦の心温まるやりとりに差し挟まれる強烈なひと言。またひと言。そして反転。自分と他との境界の危うさ。怖い怖い、と思いながらも堪能した。でももしかして、時季を選ばず読んだのは、ちょっとたぶん脳天壊了、的な、ね・・・。 2014/12/17
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