内容説明
本書は、日本で初めて公共施設家具の製作を手がけた企業が、100周年事業の一環で社内に蓄積された記録写真や資料をアーカイブ化するなかで生まれました。記念すべき最初の製品は、関東大震災直後の1923年に、フランク・ロイド・ライト設計による帝国ホテルの演芸場に納めた客席でした。翌1924年に帝国劇場(設計・横河民輔)のために1,700席を製作。これが100年にわたる劇場イス製作の始まりとなりました。戦後まもなく、廃墟となった街に映画館や小劇場が生まれ、日本に文化の灯火が再びともり始めると、1951年に戦禍から再建された歌舞伎座(設計・吉田五十八)のために、劇場専用の連結イス1,500席を開発。その後も、客席イスの製作を通じて日本の劇場建築の現場に関わり続けてきました。本書には、1911年竣工の帝国劇場から2018年に竣工された事例まで、日本を代表する約60の劇場・ホールの写真を収録しています。その多くは、客席イスの納品時に記録として撮影されたものです。結果的に、地域や種類、設計・施工者の枠を超えて、日本の劇場建築における歴史的変遷や、新しいデザイン潮流を俯瞰する貴重な資料となっています。
目次
巻頭言 「まもなく開演」(池田覺)
日本の劇場史論
エッセイ
1章 「施主の時代」から新しい展開へ―1911‐1989竣工
2章 「芸術家の時代」の開花―1990‐1998竣工
3章 「観客の時代」の始まり―2000‐2010竣工
4章 「創客の時代」へ―2011‐2018竣工
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
neimu
29
生の舞台が好きだ。一期一会の臨場感が好きだ。だが、満足できる劇場や椅子に出会うことは滅多に無い。まして、万博前後に建てられたホール・会館・公民館・劇場等のウワモノ建替ラッシュが続いている現在、会場不足でアップアップ。この本に出ている場所で知っている所も10か所に満たない。客席から見た小宇宙は余りにも少ない。せめてこの写真集で浸ろうという次第。椅子が収納できる出来ない、音響反射板が、壁素材がと言い出したらきりがないが、専門家じゃないから見た目しかわからない。しかし、眺めているだけでもやはり楽しい。2020/02/02
入道雲
12
とても素敵な本だ。日本各地の劇場やホールが写真多めで楽しめる。地方にも魅力的な建築が多数あり、ページをめくるたびにワクワクする。劇場の大ホールに入った時の何とも言えない高揚感が呼び起こされる。冒頭の串田和美さんのエッセイも素敵だ。プラネタリウム版もあったら楽しいかもしれない。2020/02/23
arisaka
6
日本で初めて公共施設家具の製作を手がけたコトブキシーティングが100周年事業の一環として刊行した、手掛けた劇場の写真集。イスの会社なのでイスの解説かと思いきや、劇場全体の建築意図の解説が主でイスの説明はあまりなくて残念。観客にとってはイスはとっても重要なのに。リニューアル前のコクーンのとかひどかった……げふんげふん。納品時に撮影されたという写真はステージから客席(イス)を広角で捉えていて、役者さんはこういう景色を見ているのかと感慨深かったです。2020/04/07
まろまろ
4
人々を包み込むような劇場の外観、足を踏み入れると階段や壁にアートが点在、そして宇宙船のような洞窟のようなホール、もはや開演前にテンションMAXだ。 曲線のうねりや直線の交わり、座席の色を増やすと空席が目立なくなる工夫。 パイプオルガンのきらめきが華やかさを強調する。まるで舞い踊る音が見える気がする。2020/10/03
ganesha
4
1911年竣工の帝国劇場から2018年竣工のhitaruまで、国内の57の劇場・ホールを家具製造企業の写真アーカイブをもとに紹介した一冊。新潟市秋葉区文化会館ユニークな形状とくれ絆ホールのろうそくの炎を表現したというイスが素敵だった。2020/08/29