出版社内容情報
擬態,子殺し,雌の選り好みなど,生物の多様な生き様について,東アフリカ・パラオ等で自ら撮影したカラー写真とともに易しく解説。 地球上には多くの生物が共存し多様な生活を営んでいます。生物の面白さはその多様性にあると言っても過言ではありません。生物の長い歴史のなかで,生物は同種あるいは他種との相互作用や取り巻く環境の影響により進化してきました。生物の多様性はそれぞれの種が進化してきた歴史に裏付けられています。
例えば,ライオンでは「子殺し」という行動が普遍的に見られます。ライオンの社会構造の研究によって,この一見不利益となる「子殺し」の意味を説明できるようになりました。体の大きなサバンナゾウは捕食者に対しては無敵です。しかし,体重を支えるために脚の骨はかなり無理を強いられています。その証拠に大型の肉食獣がいない小島では子馬ほどの大きさになっていたことが分かっています。皆さんは,「動物の性は性染色体によって決まる」と思っていませんか。ところがウミガメは胚発生時の温度によって雄になるか雌になるかが決まります。このまま地球温暖化が続くとしたら,ウミガメの性は一方に偏ってしまわないのでしょうか。
本書では,このような話題を取り上げ,私自身の撮った写真を使って「生物の多様な生き様」を紹介したいと思います。多くの皆さんが,「こんな変わった生物もいるのか」,「この動物の変な行動にはこんな意味があるのか」と生物に興味をもたれ,「生物はこんなに面白い」と感じていただければ,とてもうれしく思います。(「はじめに」より)
目次
第1章 マダガスカル
1 キツネザルは海を渡ったか
2 マダガスカルサンコウチョウ:二型の体色をもつ鳥
3 カメレオンの楽園
4 バオバブ:大陸移動の証人
5 乾性有棘林の奇妙な植物
コラム ? エピオルニスの巨大な卵
第2章 東アフリカ
6 ライオン:ネコ科の異端児
7 シロサイとクロサイ
8 サバンナゾウ:大きいことはいいことか
9 ダチョウ:卵にまつわる話
10 レイヨウ類の適応放散
11 アフリカスイギュウ:「ビッグファイブ」からの陥落
12 チーター:か弱きハンター
13 フラミンゴの赤いミルク
14 カバ:クジラとの意外な関係
15 ハイラックス:和名はイワダヌキ
16 ハイエナ:「こそ泥」と呼ばれて
17 ハゲワシ:腐肉食のスペシャリスト
18 キリンの血圧
19 シマウマの縞
20 マングースの変身
21 アリアカシア:アリと共生する植物
コラム ? 大地溝帯(グレート・リフト・バレー)
コラム ? オルドヴァイ峡谷
第3章 インド
22 ベンガルトラ:絶滅に瀕する森の王者
23 インドクジャク:雄が美しい理由
24 ハヌマンラングール:「子殺し」の発見
第4章 ボルネオ
25 オランウータン:人類の系譜を考える
26 テングザル:反芻行動をするサル
27 ラフレシア:世界最大の花
28 ウミガメの涙
29 ヘビ:細くて長い体の秘密
コラム ? 熱帯雨林のキャノーピー・ウォークウェイ
第5章 海の生きものたち
30 クマノミ:性転換する魚
31 ウミウシ:生きている海の宝石
32 ミミックオクトパス:「擬態」するタコ
33 オウムガイ:殻をもつタコの仲間
34 リーフィー・シードラゴン:竜と呼ばれる魚
コラム ? 世界遺産トゥバタハ岩礁海中公園
終章 遺伝子をもとに生物進化を考える
35 ドラゴンズ・ベビー:洞窟に棲む両生類
参考文献
おわりに
事項索引
生物名索引
汐津美文[シオツ ヨシフミ]
1982年 九州大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。大学院在学中は昆虫の個体群生態学,行動生態学を研究。現在 学校法人河合塾開発研究職,生物科講師。高校教科書分析,テキストや模試問題の作成,映像授業などに関わる。趣味は秘境旅行,スキューバダイビング。野生動物に出会う旅にハマっている。