内容説明
バイカル湖から流れくるアンガラ河のほとり、マチョーラ村がダムに沈む。着々とすすむ故郷の焼却処分にあらがい、滅びゆく村と運命を分かち合う老婆たち。環境保護運動にも力をそそぐ作家がシベリヤの大地に生きる農民の姿に未来への希望を託した渾身の力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aika
41
心の襞に染み込む、人間の魂を描き抜いた本物の名著だと思います。発電所建設のために焼き払われ、水の底に沈められていくシベリアの寒村マチョーラ。先祖が眠る墓地もなぎ倒され、それでも失われていく故郷を離れられない老いた人も、科学技術に夢と野心を託して街へ勇み行く若き人も、この村でどう生きてきて、これから新天地でどう生きるのか。自身の人生と真正面から向き合わざるをえない葛藤に幾度も涙が止まりませんでした。中でも、人間には時流に逆らってでも手放せない尊厳があることを教えてくれたダーリヤ婆さんの言葉が忘れられません。2020/08/30
かもめ通信
15
1970年代半ばに書かれたこの物語の舞台は、シベリアのアンガラ川のほとりにあるマチョーラ村。水力発電事業の促進のためにダムの底に沈むことになった村では、移転作業が急ピッチで進められていて、残るは少しでも長くこの地に踏みとどまりたいと願っている年寄りばかり。老人達のまとめ役でもあるダーリヤを中心に描かれた物語は、子世代孫世代を巻き込みながら故郷への思い、自然との交わり、家族のあり方、地域のあり方、仕事とはなにか、生きることとはなにか、さまざまな問いを発しながらも静かに淡々と人々の暮らしぶりと時を刻む。傑作。2015/04/05
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