出版社内容情報
内藤 了[ナイトウ リョウ]
著・文・その他
内容説明
クライマーの滑落事故が発生。現場は地図にない山奥の瀑布で、近づく者に死をもたらすと言われる「首洗い滝」だった。広告代理店勤務の高沢春菜は、生存者から奇妙な証言を聞く。事故の瞬間、滝から女の顔が浮かび上がり、泣き声のような子守歌が聞こえたという。滝壺より顔面を抉り取られた新たな犠牲者が発見された時、哀しき業を祓うため因縁物件専門の曳き屋・仙龍が立つ。
著者等紹介
内藤了[ナイトウリョウ]
長野市出身。長野県立長野西高等学校卒。デザイン事務所経営。2014年に『ON』で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
COSMOS本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさきち
141
よろず建物因縁帳第二作。今回は建物ならぬ秘匿されてきた滝に纏わる因縁ということで、歴史的展示の提案を行う春菜と曳家師の仙龍が絡んでくるのかと思っていたら、見事に解決へと導いてくれて一安心。そして展開もホラーに偏りすぎず、逆に強引に理屈で固めすぎず、尚且つ情的なものも絡ませながら、時に春菜の仙龍に対する密かな恋心なども垣間見せ、バランスよく多くの要素を楽しめるシリーズの一冊として堪能いたしました。2024/04/02
utinopoti27
138
舞台は落ち武者狩りで生計を立てていたという信州の村。差し出す首を洗っていたとされる伝説の「首洗い滝」で、滑落死したクライマーの顔は剥ぎ取られていた。地図に載らない滝に現れる観音像の幽霊、浮かぶ女の顔、聞こえてくる子守唄・・禍々しいオープニングだ。今回の因縁は、不遇の仏師と身重の遊女の悲恋。なんとも切ない話だが、これと対峙するのはヒロイン・春菜はじめ、仙龍ほか個性あふれるメンバーたち。不気味なホラー話ではあるけれど、それほどグロに走らず、怖さよりはむしろ爽やかな読後感すら味わえる異色作と言えそうです。2019/03/13
sin
129
うまい!しかし薄い…この内容であればもう少しじっくりと作品世界に浸らせて欲しいものだが、どうだろう?話の筋立てがトントン拍子過ぎてよく言えばテンポが良いが、拙速な感じは否めない。この調子で書き飛ばしていかれると、いくら作品の質が良くても近いうちに飽きを感じさせてしまうかもしれないとは思わないのだろうか?勿体無い話である。読んでいる最中に気が付いた事だが、物語のベースは手塚治虫の『どろろ』の“白面不動 ”の巻を彷彿とさせるようだ。2017/06/24
ぽんすけ
125
なんとも物悲しい話だった。怖さでいったら自分的には1巻の方が怖かったが、胸が苦しくなるのは断然こっち。人の想いの強さっていうのは本当に時間を超越して残るのかもしれないな。兵頭とむぎそれぞれの思いが痛い。稀代の彫師ながらむぎを愛するあまり本当の彼女以上の面を彫ることができず肉面を作ってしまう狂気と慈愛に満ちた母子像との対比。死してなお子守歌を歌い我が子を思いながら失った面を求めて死人を出すむぎ。関係者全てが見守る中で行われた因縁切りで一気に滝が清浄な空気になるのが爽快。辰巳さんが神社継いでくれてよかった2021/03/29
🐾Yoko Omoto🐾
125
村の人間のみが存在を知り恐れる地図に載らぬ滝で、地元の若者が滑落による死を遂げたが、その顔は無惨にも剥ぎ取られていた。神社の謂われを中心に次々と明らかになる村の歴史、滝に宿る妄念、ミステリとホラーのバランスの良さがシリーズの読みどころ。悪霊退散などの除霊とは異なり、怪異の源や発端を突き止め、その地や建物に付く悪い因を断ち新たな因を結び直す、という再生要素が濃い点も魅力的だ。因習や土着信仰は忌まわしきものとされがちだが、元となる出来事には当時の人々の苦渋の決断や悲劇が隠れていることが本当に多いと感じる。 2020/09/16