内容説明
黒魔術師の誘いに最後の望みを託し、渡されたクリームを全身に塗ってモスクワの空中を自在に飛行する存在となったマルガリータ。ヴォランドに乞われるままサタンの大舞踏会の女王役をこなした彼女は果たして巨匠に自由をもたらし、失われた原稿を蘇らせることができるのか?イェシュアの処刑に悩まされる総督ピラトは断ち切られた会話をもう一度続けることができるのか?人々の混乱が頂点に達したモスクワではついに当局がヴォランド一味を50号室に追いつめ、イェルシャライムからは1人の客人がモスクワを訪れる―ブルガーコフが作家生命を注いで完成させた小説の大団円へ物語はすすむ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
40
やっと下巻でマルガリータが登場と思ったら、巨匠がかすむほど大活躍だった。なんぼ透明人間で人からは見えないといえども、全裸のまま空を飛ぶなんて、なんちゅう冒険!そして悪魔一族は退治される存在(と決めつけた頭の固い私💦)ではなく、読了すれば、むしろ束縛のない自由への案内人だった、ちゅう感じ。それほど現実世界が厳しくて悪魔一族の手を借りなければ抑圧から逃れられない状況だったのか?悪魔一族のイタズラ(つまり破壊行動)を笑って楽しめなかった私、やはり頭が固い?解説によれば、作者の生家は博物館になっているそうな。2025/03/16
Miyoshi Hirotaka
19
1930年代とイエス・キリストの時代を自由に往来する構想に度肝を抜かれた。両時代とも信仰は命がけだった。さらに、登場人物の振る舞いも常識外れ。これらがモスクワに実在する通りや街で躊躇いもなく普通に起きることとして描かれ、不条理さに彩を添えている。作者のブルガーコフはウクライナの白衛軍の軍医。この出自と経歴だけでも様々な不条理や困難を経験したことが容易に想像できる。物語の中には隠喩や暗喩が満載。これらに政権批判という匂いを感じ取った体制側にも文学的素養があったと思われる。良きも悪しきも文学は国と民族の基礎。2020/10/13
ソングライン
17
その黒魔術でモスクワ市民を驚かせた黒魔術研究家ヴォランドの正体がサタンと知れ、彼の願いで舞踏会の女主人の役を果たしたマルガリータはその返礼として空を飛ぶ魔女の力を得、精神病院にいる恋人の巨匠を取り戻します。作中で語られるイエスの死の判決をした総督ピラトの苦悩、それを描こうとした巨匠の小説、巨匠とマルガリータの結末は何を意味するのか、サタンたちが去ったモスクワの街に残る虚無、渾沌の物語りに呆然です。2023/06/07
ndj.
13
再読。上巻は圧倒的カオス、そして下巻は圧倒的解放!自由!しがらみも面倒もすべて置き去りに、どこまでもいける自在感!「燃えろ、燃えろ、過去の生活!」「燃えろ、苦悩の日々!」不自由な環境でこれを書き継いだブルガーコフの心の叫びが聞こえてきそうだ。2018/01/21
ぐるぐる244
11
最近読んだブロックマイヤー「終わりの街の終わり」の中で登場人物(≠主人公)が世界が終ろうとしているのに読み続けていた本。ということで読んでみた。ソビエトに対する暗喩や隠喩など歴史背景を知っていればもっと面白いんだろうけれど、ポップで明るいのにびっくりした。対照的に作中の巨匠が書いたピラト(と愛犬)の物語がしっとりと印象的。なぜかチェスタトン「木曜日だった男」を思い出す。2019/11/27
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