内容説明
寺島蔵人は藩政批判をして三度も咎められた。文政元年藩主斉広の始めた「御国民成立仕法」で「百姓は米を食わぬよう」とされた時は、米が食べられない民がいるのを藩主は恥としないのか、藩主は民のために存するのではないか、と痛烈に批判。大塩平八郎の乱には「尤も」と共感。能登島に流刑となるが、批判精神はそのまま、ボロを着て「ちょぼんとしちべた(尻)」を出す少女にまで視線を注ぐ優しさも最後まで失わなかった。江戸期の政治とは何か、現代社会に通ずる根源的な問いをめぐる物語。
目次
蔵人の出自と父の時代
少年時代の蔵人と養家寺島家
斉広の初政と高岡町奉行時代の蔵人
二の丸の再建と規式能・慰能の挙行
改作方復古と改作奉行時代の蔵人
勝手方御用の蔵人と大坂借財仕法の改定
文化末期の藩財政と三国与兵衛
御国民成立仕法の開始
十村断獄と蔵人の断獄批判
斉広の隠居と教諭
蔵人の藩政批判と蔵人派の台頭
蔵人の能登島生活とその死
著者等紹介
長山直治[ナガヤマナオハル]
1942年石川県金沢市に生まれる。1965年金沢大学教育学部中等教育科卒業。同年石川県立高校教諭に任用、金沢桜丘高校・金沢錦丘高校・金沢向陽高校・石川県立図書館(古文書課)・金沢西高校・松任高校・金沢錦丘高校・金沢女子高校・金沢伏見高校・県立工業高校(定時制)に勤務。2003年石川県立高校教諭を定年退職
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