出版社内容情報
「俺達の日常にはバッセンが足りない」ある日、シンジの幼馴染のエージが突然言った。バッセン――バッティングセンターなんかつくってどうするんだと聞くシンジに、エージは「ないから作ろうかなって」と言うだけ。金策のため旧友のミナに連絡をとるシンジ。そのころ、信用金庫に勤めるミナは、ある問題を抱えていて……。皆で盛り上がったり憂さを晴らしたり、〝なくてもいいけどあった方が良い〟バッセンの建設を巡る、悩み、もがき、あがいて生きている人間たちの群像。
内容説明
実家が土建業を営むシンジ。その寮に、中学の同級生・エージが転がり込んできた。周囲に迷惑ばかりをかけてきたエージだが、ある日突然バッティングセンターをつくろうと言い出す。シンジはエージとともに信用金庫に勤める旧友のミナを頼って融資を申し込むが、馬鹿じゃないのと追い返される。だがその後、ミナから連絡があり高額の融資を通したという。いったいなにがどうなっているのか。エージは不敵に笑うだけだった…。人生のターニングポイントに立つあなたに贈る傑作長編小説。
著者等紹介
三羽省吾[ミツバショウゴ]
1968年岡山県生まれ。2002年『太陽がイッパイいっぱい』で小説新潮長編新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みかん🍊
86
バッセンとはバッティングセンターの事だが野球の話しではない、実家の土建屋で電話番状態のシンジの所へ転がり込んできたエイジはどうしょうもない男だが、近所のバッセンが潰れていた事を知り「俺たちの日常にはバッセンが足りない」とバッセンを作ると言い出す、馬鹿にしていた信用金庫に勤めるミナ、元ホストのアツヤら同級生を巻込み、何故か計画が進んでいく、エイジはi今時流行らないのに何故作ると言い出したのか、ネグレクトを受けていた生い立ちが影響していたのか、居場所を作りたかったのか、何の情報もなく読んだが面白かった。2021/09/14
nemuro
66
図書館本。たぶん初遭遇の作家。帯に「人生のターニングポイントに立つあなたに贈る傑作長編小説」とあった。そんな大層に考えることもなくただ時の流れに身を任せるがごとく過ごしている私だが、まあこんな主張するタイトルも嫌いじゃないので借りてみた。「初出 webマガジン『カラフル』2018年2月~8月。書籍化にあたり加筆・修正」。なんだか同じく図書館本の『国道食堂』(小路幸也)の読後感と似たようでもあり、悪くない。かつて札幌・ススキノ(創成川近く)にあったバッセンに意味もなく通い詰めた時期があったことを思い出した。2023/06/30
シャコタンブルー
65
近隣にあったバッテイングセンターはすでに無く、それが今もあれば通っていたかも知れない。何故なら大谷選手の活躍が刺激になりバットを思い切り振り回したいから(笑)。行き当たりばったりの仕事をしているエイジが今度は突如バッセンを造ることを目標にする。土地も資金もなく無謀と思えたが、渋る同級生達の協力を得て目標に突き進む。親子の葛藤や同級生の心境も描かれてそれなりに面白いが順風満帆すぎる気がした。エイジが殴られたままで涙を流すシーンには感情移入できなかった。溢れる感情や意思を思い切り吐き出して欲しかった。2021/07/20
pen
47
「バッセン」=バッティングセンターの略。実家が土建業を営む中学時代の級友の元に居候するエージは、何をしても長続きせず、周囲と金銭トラブルを起こす鼻つまみ者。(笑) そんなエージが起業を試みたのは「俺達の日常にはバッセンが足りない」と呟いたバッティングセンターの開設だった。硬派なお仕事小説家と思いきや、関わる仲間の過去や人生を結構、掘り下げる。エージ自身も壮絶な子供時代があった。これはこれで別の物語でいけたのでは。バッセンでなくてもと思わせる所に三羽さん独特のユーモアーもあるのだけれども(笑) 2021/07/25
りんご
44
クスッとさせてホロっと泣かす。「エージの人生には〇〇が足りない」切ねえなあ。●家庭環境が良くない連鎖、断ち切ることができるといいな。●わお、騙された。●みんなそれぞれ成長。気持ちいいー。 などなど盛りだくさんです。そんな中私の心を掴んだのはこれです。「アナリストもビーチクリーン活動も下ネタじゃねえから。」いい本!この作者さんの本もっと読んでみたい。あー、あとバッセン行きたいとにかく行きたい。大谷のイメージで打つから。2023/07/19