内容説明
民主的な社会において拷問は許されるのか。9.11後のアメリカで議論が重ねられてきた「強制尋問」をめぐるさまざまな言説を詳細に検討し、「人間らしく暮らせる」世界のありかたを探る。
目次
序 拷問という難題
第1章 「拷問国家」アメリカの長い歴史
第2章 拷問に奉仕する法学者たち
第3章 アメリカは世界中で拷問を行う
第4章 時限爆弾が仕掛けられたというたとえ話
第5章 高貴な拷問人
第6章 悪は善ではない
第7章 常軌を逸した寓話
第8章 無益な拷問
第9章 交渉の余地がない原則に固執する
第10章 非合法な国家
著者等紹介
テレスチェンコ,ミシェル[テレスチェンコ,ミシェル] [Terestchenko,Michel]
1956年、ロンドン生まれ。パリ政治学院卒。哲学博士。ランス大学で教鞭をとる。著書多数。また、『ル・モンド』紙をはじめとする一般紙に、政治や民主主義に関する論説を数多く寄稿する
林昌宏[ハヤシマサヒロ]
1965年名古屋市生まれ。立命館大学経済学部卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Megumi
2
拷問をめぐる主にアメリカの議論状況とそれを批判する論稿。十分に理解できたか心許ないけど、拷問という、人間の尊厳を犯す行為は、拷問される人、する人だけでなく、国家としての尊厳をも損なわせるというメッセージはよく伝わった。2024/02/28
たろーたん
1
面白かったのは「無益な拷問」の章だ。組織的な拷問によって生じる問題は二つある。一つは、拷問人には命令や規則を遵守しなくなる傾向があるため、組織を衰退させる。もう一つは、拷問によって数多くの誤報が生じ、尋問官が無益な情報の洪水に呑み込まれてしまう。拷問すると、二人の関係には言葉がなくなり、相手は拷問人が語ってほしいことではなく、自分が語りたいことしか喋らなくなる。拷問で得られた情報は、ほとんどの場合、その苦痛を中断させるために発せられたものであり、そのような情報は役に立たないのである。(続)2024/09/23
スタンカ
0
拷問はある条件を満たせば(時限爆弾の仮定のように)、必要悪として認めざるを得ない、ただし現実ではそのある条件を満たす事はあり得ないため事実上認める事は無い。また拷問は情報取得としては有用ではなく、また目的ですらない。敵に恐怖を与えるために行なっている。以上が前半で後半は拷問を行うと国家が崩壊するということが述べられている。2019/04/22