内容説明
「象徴」とは何だろうか。その歴史的意味は何か。気鋭の歴史家が戦前にまで遡って解明する。
目次
序章 近現代天皇制研究の成果と課題
第1章 世界的な君主制の危機と近代天皇制―吉野作造の天皇制構想
第2章 「デモクラシー」と「国体」―永田秀次郎の思想と行動
補論 大正期の天皇制・「国体」とマスメディア・社会
第3章 戦時体制と天皇制
第4章 敗戦直後の天皇制構想
第5章 戦争責任論と象徴天皇制
終章 「元首」と「象徴」のはざま
著者等紹介
河西秀哉[カワニシヒデヤ]
神戸女学院大学文学部准教授。1977年愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(歴史学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
バルジ
3
「天皇制」とデモクラシー、国体を絡め戦前から戦後までの天皇制をめぐる思想的位置付けを再検討し、現代の「象徴天皇制」議論を見据えた一冊。 やや難解なので読むのに時間がかかったが、吉野作造の君主制とデモクラシーを考察し「象徴」に対する先見性、道徳的君主として位置付けられた「天皇」がその道徳性故に追及され続けることとなった戦争責任等、示唆に富む論考ばかりで勉強になる。2018/09/16
うんとこしょ
2
戦前と戦後の天皇制の連続面を捉え、象徴天皇制へと接合してゆくことになる思想ないし考えがすでに戦前において伏流していたことを示すのが本書の狙いであり、翻れば、象徴天皇制が近代天皇制の論理を伏在させていることを意味しているようにも思える。ひとつだけ言えば、吉野作造の天皇制論からもわかるように、資本主義の矛盾に晒された人々による下からの革命=民衆による主体の自己獲得を温情的な態度で予防する支配階級の装置として天皇制はあるということだろう。無論、戦前は治安維持法のように体制によるあからさまな暴力が伴っていたが。2019/02/05
八八
2
河西秀哉の博士論文の書籍化である。大正デモクラシーや戦時、戦後など歴史的な流れの中で「象徴」とはどのように議論され展開したのかについて考察する。吉野作造や永田秀次郎などの当時の人物の著作などから考察しているが、少し其々の章の関連が微妙である。読んでいても掴みにくさが残る。2018/07/11
秋津
0
「象徴天皇制とは何か」という問いに対し、世界的な君主制の危機の時代でもあった大正期まで遡り、近代天皇制及び近代日本の「国体」はどのように変容を遂げたのかに着目し考察した一冊。 天皇(制)の役割がデモクラシー思想の勃興、総力戦遂行、敗戦後の「民主化」等の課題に応じ変化することや、根底に変化を可能とする余裕や曖昧さを有するからこそ、戦前-戦後という枠を超えて存在し続けることが可能となったことを学びました。 特に天皇の「人格」や「人間」としての天皇といった問題は現在・将来の問題でもあるなと興味深く読みました。2018/04/30
Y_Kuroyanagi
0
20180409ー201804202018/04/20
-
- 和書
- 視覚の文化