内容説明
一家が移った町は再開発に揺れた。友情と淡い恋、青春の輝きと不安、そしてあの日の記憶。韓国語でもよめる。
著者等紹介
ペクスリン[ペクスリン]
白秀麟。1982年仁川生まれ。延世大学仏文科卒業後、西江大学大学院を経てリヨン第2大学仏文科博士課程修了。2011年に短編「嘘の練習」が京郷新聞の新春文藝に選ばれ文壇デビュー。『静かな事件』で2017年に第8回若い作家賞を受賞しているほか、2018年に「夏のヴィラ」で第8回文知文学賞、「親愛なる、親愛なる」で第2回李海朝文学賞などを受賞している
李聖和[イソンファ]
1984年大阪生まれ。関西大学法学部卒業後、社会人経験を経て韓国へ留学し韓国外国語大学通訳翻訳大学院修士課程(韓日科・国際会議通訳専攻)修了。現在は企業内にて通訳・翻訳業務に従事。韓国文学翻訳院翻訳アカデミー特別課程修了。第2回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」にて「静かな事件」で最優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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匙
14
他の作家で喩えるのは失礼かもしれないけど、望月花梨漫画を好きな心の琴線がふるえました。再開発をめぐり垣間見える人の残酷さ、打算、悲しみ、忘れられない一瞬の情景。繊細な情景をさっと描写するのが本当に上手い。とても良かった。2022/08/18
Nishiumi
11
仲良し三人組の中でなんとなく一人感じる疎外感。別に男の子の方をすごく好きって訳じゃないのに、自分以外の二人が好きあっているのをただただ見ることしかできない気まずさ。再開発に揺れるタルトンネでドアノブを握りしめて、雪の降る町を家の中からじっと見ていたのは、人生の傍観者にしか自分はなれない暗示だと言うけれど、そんな解釈は悲しすぎるよ。でも確かに、人生の決定的場面があるとするなら、それが良い意味であれ悪い意味であれ、美しいものであって欲しいなとは思う。2025/01/30
ぱせり
4
中学の終わりから高校までを過ごした町。町のどんよりとした空気は、住人達の雰囲気に似ている。「私」の友人たちはその雛型のようだ。同時に、この閉塞感は、思春期の「私」そのものでもあったと思う。でも、思い出に残るのはきっと、ちらっと見えた(ような気がする)ほの明るい光景。2022/05/10
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2
以前、アンソロジーで『黒糖キャンディー』を読んで良かったので。訳者あとがきと合わせて、二度美味しい小説。淡々としているのに寂しさや薄暗さが一切なく、満たされるような瑞々しい描写がとても好き。「決定的な場面」で語られている文章が核心をついている。デビュー後に著者が語った「どこにも属せないまま暮らす名もなき存在に関心がある。そんな存在に名前を与え、何よりも人間を深く描ける作家になりたい」という、力強い言葉の数々をたくさん味わってみたい。『夏のヴィラ』も楽しみ。2022/05/10
高草滋汰
1
人間誰にも自分の人生や性格を象徴するエピソードがあるよな〜!と思った。そういうエピソードを思い出す時って大抵同じようなことが起きていたりして、あぁ自分って昔からそうだよなぁって思って悲しくなったり、逆に昔からこうだから仕方ないよなと幸せを諦めたり。 小説自体悲しい話ではないけれど、その未来にある主人公がこの記憶に至った出来事を思うと少し悲しくなるけど、それは描かれていないというのがとても面白い話だった!2024/11/14