内容説明
本書に描かれているのは、大都会をさまよう現代人の孤独で悲しい姿である。テーマ自体は極めて内省的で、厭世的と言ってもよいのに、ユーモラスでスピード感のある文章が、作品を軽快に読ませてくれる。著者は登場人物たちの悩みを解決してやることはできない。
著者等紹介
パクソンウォン[パクソンウォン]
朴晟源。1969年、韓国慶尚北道大邱市に生まれた。東国大学大学院文化芸術大学文芸創作学科を卒業し、現在は啓明大学の文芸創作学科の教授である。『文学と社会』1994年秋号に短編小説「遺書」を発表して以来、現在までに小説集5冊を出版。2003年には「今日の芸術家賞」、2010年には「現代文学賞」、2012年には「現代仏教文学賞」を受賞した
吉川凪[ヨシカワナギ]
大阪生まれ。新聞社勤務の後、韓国仁荷大学国文科大学院で韓国近代文学を専攻。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fishdeleuze
20
不思議な質感をもつ短篇集だ。胸にぬるりとした独特の質感を憶えた。連作短編を含む短篇集。三万冊の蔵書を残して死んだ父が高額宝くじに当選していたことが判明し、その券をみつけるために墓を暴く姉弟(異母姉弟)の話など、一見奇妙な話の中に父と子、家族というフレームワークが見える。そしてもうひとつの大きなテーマは孤独だろう。ざらついた孤独。阻害された感情、孤独な人間同士のけして近寄ることのない(できない)状態が、淡々としてテンポの良い文体で描かれる。丸善の翻訳書フェアで「村上春樹が好きな人に」とあったがどうかなあ…2015/05/04
えりまき
18
2024(314)ストレートな表現に刺さりました。「変態をどうやって区別するんだ。~あの人たちは、いったいどこが違う?どれも金で買うものばかりだ。」。非常識と常識の境界のあいまいさに共感。「分裂」の「限りなく商品を量産し、人々をその商品で首つりするようそそのかし、ゴミを商品に化けさせ、わずかに残っていた主体性をごっそり奪い、自分が奴隷として飼い馴らされているという事実に気づかないようにさせる分裂だ。」や、あとがきの「読書が僕の小説の蛋白質であるなら、音楽はビタミンです。」が印象的。 2024/11/11
みみずく
8
「ただ何も考えず他の人と同じように生きて、次の人にバトンを渡せばいい」と言った母親。時間の中に住んでいたのにそこから出て行った人のことをキチガイと呼ぶのでは?という息子、そうではなくて時間のなかで飼いならされる人のほうがキチガイだという父親。人間には感情もあるし、生きていれば連鎖反応もある。ただただ生きていくだけというのも、ドロップアウトするのも難しい。2013/09/01
有無(ari-nashi)
4
時間や倦怠、奴隷になることなどから逃げ、役に立たない分野や突飛な行動に走り出す短編集。結局どこにも逃げ出せなかったり、振り出し(親と同じ行動)に戻っていたりする。親の愚痴、創作手紙や日記、論理的な説明、芸術活動の方も、意味は相手になかなか伝わらない。淡々と同じテーマが続くせいか、途中で少しダレた。2015/02/09
trash
4
コミュ障っぽい男が小説を書こうとするもうまくいかない話とか、SF小説家が冷凍保存から再生した女性にあう話とか、望遠鏡片手に父親を探す女の子の話とか変な感じの話が多い短篇集。どれも明るい終わり方はしないのに淡々とすらすら読める不思議。2013/03/07
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