著者等紹介
鬼海弘雄[キカイヒロオ]
1945年、山形県寒河江市生まれ。1973年から浅草で写真を撮り始め、1979年に初渡印。以降インドやアナトリア(トルコ)の撮影を重ねる。ほかに代表作として、浅草を舞台に、その人の醸し出す存在感と向き合うポートレイト「PERSONA」、街を歩き人々の営みの匂いを写し出す、街の肖像「東京迷路(ラビリンス)」のシリーズがある。写真を通じて人間の存在の根源的なあり方を捉えようとしている。1988年『王たちの肖像 浅草寺境内』で日本写真家協会新人賞、伊奈信男賞、1993年『INDIA』で『写真の会』賞、2004年『PERSONA』で土門拳賞、日本写真家協会年度賞など受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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らぱん
26
インドを放浪していたころ、すれ違った旅人と「インドにインド人が住んでいる限り、百年経ってもインドはインドのままだろう」と話したことを思い出した。この写真集には38年間のインドが写っている。男も女も子供も老人も、彼らは布を纏うのが実に巧い。頭に肩に腰に、その身体の部位に沿うように、機能的にまたは美的に纏う姿に見惚れる。沐浴場や斎場のある水辺、古い街並みの狭い路地、駅や線路、水平線の向こうまで続く広く浅い川。インドらしい風景をインドにしているのは、やはりインド人だ。それを思い出させてくれるいい写真集だった。2019/04/28
たまきら
22
海を臨む町の写真。そして、ガンジスに浸される人々の写真。水辺に住まう人々の表情は、この写真家が人に見出そうとする何かをまとっている気がする。インドという混沌としてすべてを包み込む存在自体がよどんだ川の様な国、それゆえに見つめずにはおれない人間には強い感情を起こさずにはいられない写真集だと思う。2019/08/13