感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
31
著者初読み。最初の「天草土産」がいきなり青春小説の傑作。素朴で背伸びをしない文体なのに情景がスムーズに浮かび、人物の心情も生々しく伝わる。私小説に対する見方が変わった。稀有な体験を綴るか、もしくは自堕落な作家が私生活を恥も外聞もなく曝け出すジャンルだと決めつけていた。上林暁が書けばありふれた日常も文学と化す。「二閑人交游図」なんて、ただ友人と遊んでいるだけなのにまったく退屈しない。「手風琴は古びた」のラストは初期の大江健三郎っぽい青春との決別と井伏鱒二的な絶妙な余韻がいつまでも後を引く。随筆集も読みたい。2023/11/09
pirokichi
21
山本善行氏撰の上林暁氏の私小説11篇。本屋で思わず手にとらずにはいられない、小ぶりで美しい造本。さすが夏葉社。どの作品も派手さはないが、なにか懐しく心惹かれ胸に沁みるものがある。なかでは『天草土産』『淋しき足跡』『冬営』『清福』が好きだった。本書を彩る阿部海太氏の絵は作品を味わい深くしている。読後、以前読んだ『昔日の客』(関口良雄)の上林氏についての記述を読み返した。関口氏が本に署名をお願いしたら、上林氏は「本を愛する人に悪人はいない」と誌したという。本書読後だけに上林氏の人柄が偲ばれ胸にぐっときた。2023/05/27
kankoto
9
一話目の「天草土産」を読み進むうちに「ああ良いな、ああ良いな」と自分自身の内側で呟いてしまう。若い二人の旅行きが初々しくて可愛らしくて巡る土地の風景、一緒に旅するようだ。 山本善行氏撰による作品集。上林作品、前回読んだのは「文と本と旅と」こちらも善行さん撰の随筆集。描かれる風景に瞬間ふっと持っていかれるような気持ちがした。今回の作品集を読んでしみじみ好きだなと思った。自分の好きな作家の一人になった。 淡々とけれど愛情を持って人物たちが描かれているのがわかる。2023/07/10
しょうご
4
円錐書店で購入をしました。装丁が素敵な本は持っているだけでもワクワクします。 読んでいて考える余白の多い文章だなと感じました。 表題作『孤独先生』のときは学生時代にお世話になった先生方を思い出しながら読みました。2023/10/12
isbm
0
★★★2023/05/25
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- 和書
- 100時間の夜 文学の森