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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蔦屋重三郎そっくりおじさん・寺
75
復刻版。夏葉社の本なので、育児詩集的な優しい本だとつい思っていたが、読むと冒頭の詩『美しい日没』に打ちのめされる。「たれにそうせよと言われたことでもなかった/ 笑うべき善意と/ 卑しい空威張り/ あげくの果は/ 理由もなくひとを傷つけるのだ/ お前を信じ、お前の腕によりかかるすべてのものを」これは私の事ではないのか?しかも今の私の。黒田三郎の詩を1冊読んだのは初めてだったが、薄いのに侮れない多様な読み所を含んだ永遠な本である。先日読んだ鶴見俊輔『詩と自由』に黒田のポルトレがあったのを思い出し再読した。2020/10/22
はる
58
昭和30年頃。奥さんが入院してしまったために始まった、父親と3歳の娘のささやかな日々を綴った詩集。お酒にだらしない父と、そんな父が大好きな娘。ユーモアと哀愁を漂わせながら、平明で分かりやすい言葉で綴られた文章は時代を感じさせない。特に「夕方の三十分」は傑作。夕暮れの街角を、父親と小さな娘が手を繋いで歩いていく姿が目に浮かぶよう。2023/02/16
ひさしぶり
33
開けると昭和の匂いがする詩集。夏葉社からの復刻版。「うっかり洩らしたひとりごと」のようなという形容詞がぴったりくる。オトーチャマがオトーになりジジイになって、ひと口ががぶりと飲み尻を叩く。やがて素直にやさしくなる。「夕立の三十分」だけでその生活が目の前に展開します。復刻ありがとう。2022/07/30
アオイトリ
28
読メのレビューより)学校で習ったかもしれませんが、大人になって読む黒田三郎は新鮮で素晴らしかったです。わかりやすい言葉とテンポが心のうちを豊かに伝えます。妻の入院中、世話をする幼い娘への愛というより、ご自身の屈託が痛い。その自嘲もまたよくわかる。「自分自身に耐えるために酒を飲む」大変な酒乱であった彼が抱えていたのは何だったのだろう。奥さんのエッセイも読んでみたくなりました。2023/03/05
三平
17
妻が入院し、幼い娘ユリとともに二人暮らしすることになった黒田三郎。 勤め人であり、家事も行い、“オトーチャマ”であり、更にどうしようもない呑んだくれでもある著者と小さな恋人との日々を綴った詩集。 ダメな自分を含めて率直に紡がれた詩からは、親になりきれていない父親の自嘲と、それでも無自覚に湧き出てしまう娘への愛おしさが伝わってくる。なんだか優しく、そして切ない大切な時間。 お人形さんのような小さなユリと手をつなぐ当時の著者の写真が添えられているのも嬉しいおまけの素敵な復刊本。2016/06/11
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- 和書
- 沙石集の構造