内容説明
尾崎一雄、尾崎士郎、上林暁、野呂邦暢、三島由紀夫…。文学者たちに愛された、東京大森の古本屋「山王書房」と、その店主。幻の名著、32年ぶりの復刊。
目次
正宗白鳥先生訪問記
コロ柿五貫目
虫のいどころ
古本
偽筆の話
上林暁先生訪問記
恋文
伊藤整氏になりすました話
尾崎さんの臨終
最後の電話〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
災害大嫌い美少女・寺
96
私はこの関口良雄という人を不明にして知らなかった。たまたま行った小さな本屋さんで、今時珍しい布装の本書を見て心惹かれた。図書館に同書があるのを知り借りて読む。古本屋さんに名文家が多いとは言われるが、本書もその例に漏れず一読巻を措く能わざる1冊だった。多くの文人学者達に愛された古書店・山王書房の主である著者の交遊、特に尾崎士郎(いい人!)、尾崎一雄(いい人!)との交流は面白く心暖まる。三島由紀夫や野呂邦暢も登場。亡き父の思い出。さまざまな客人。自然への眼差し。どれも心癒される思い。随筆の名作。お薦めである。2018/10/23
おいしゃん
89
東京・大田区の馬込にある、山王書房店主の随筆。又吉さんの「第2図書係補佐」で知った一冊。馬込界隈は、尾崎行雄や川端康成、室生犀星など、多くの文人が住まい、彼らとの交流を飾らぬ文体で描く。一時期私も馬込に住んでいたので、情景を浮かべながら楽しく読めた。2015/06/29
どんぐり
71
1978年に三茶書房から出版された復刻本。著者は東京の大森にあった古書店「山王書房」で、亡くなる1977年まで店主をしていた。ここには古本屋を通して出会った上林暁、尾崎士郎、三島由紀夫、野呂邦暢といった文士や市井の人たちとの交流や本のことがいろいろと書かれている。冒頭は、正宗白鳥の初版本20数冊を落札し、それをかついで白鳥の住む赤い屋根の洋館を訪ね、集めた本を先生にお目にかけたいと家人と鶏小屋でやりとりするところから始まる。この訪問記が、本好きにはたまらなく面白い。古本屋が街から消えていって久しいが、店頭2017/09/19
あつし@
59
親友から紀州の梅と一緒に贈ってもらった。特別感動する訳ではないけど、手にした瞬間の感触がよくて味わい深い本だったよ、僕より君はきっと楽しく読むだろう、と言うことで。届いたきのうの夕餉に梅をいただき、きょう雨の日曜日の昼過ぎに読み終えた。懐かしい古本の匂いがする様な気がした。笑ったり悲しくなったり、後にひかない紀州の梅の酸っぱ味とあま味の味がした。2021/09/12
nonicchi
56
本を開くと、懐かしく、あたたかく、ゆったりとした時間が流れ、久しぶりに読み終わるのが惜しいと思った。又吉さんのTV紹介で、興味をもって拝読したが、期待以上の素晴らしさだった。多くの作家・文化人のみならず、足繫く通ってくる顧客との交流や何気ない日常、ふるさと飯田の思い出、どれも素敵な文章で綴られている。息子さんの言う通り、古本屋として一番いい時代を過ごされたのだろう。登場してくる人が皆魅力的なのは関口さんの人柄か、はたまた文才故か。馬込は隣の区で、土地勘も少々あるので、今度の休みに早速散策してみよう。2023/04/17