感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
48
いよいよ後半。活字を読んだときのイメージとも、映画や80年代の最初の作画とも違って、全体に奥深さが漂っているという感じがいよいよ強くなる。渡り鳥への手旗信号を振るシーンひとつとっても、それがわかる。1巻に描かれた旅立ちの前、きらびやかな町の情景の雰囲気から少しずつ重く、解釈のむずかしい出来事や人物が入れ替わっていく。ゆったりと読むと、その意味は何なのか、何かか隠されていると思えてしかたがない。原作もますむら版も、解説本も何度も読んで、ストーリーは承知しているが、この先どのように描かれていくか、期待したい。2023/06/10
ぐうぐう
25
前巻から約2年ぶりとなる『銀河鉄道の夜 四次稿編』第3巻。ますむらひろしの誠実な現場検証としての四次稿コミカライズだが、原作にとことんこだわりつつ、原作原理主義に陥っていない点がいい。例えば、初稿と二次稿にはあった海豚の場面が三次稿から削除されているはずが、ますむらは海豚を見て心象スケッチに賢治が何度も記録していることから、この四次稿編であえて海豚の場面を描いている。さらに、コロナ禍での作画になったことで、ある場面にアマビエをこっそり描くという遊びも楽しんでいる。(つづく)2023/07/02
ゴロチビ
4
いやぁ、難解です。新聞連載時は切れ切れに読むから分からないのかなと思っていましたが…。様々な人や物が登場しては去っていきますが、その姿や言葉や表情などに、いったい賢治がどんな意味を込めたのか?私には見当もつかないのです。しかしそれでも、タイタニック号に乗り合わせたらしい姉弟と青年の話には胸が締めつけられました。賢治はリアルタイムでこの世界最大級の海難事故を見聞きしてるでしょうから、やはり大きな衝撃を受けたのでしょうね。1、2巻でも思いましたが、やはり大きな画面と美しいカラー表現が素晴らしく、息を飲みます。2023/05/31
ミョウガ
0
「いちめん黒い唐草のような模様の中におかしな十ばかりの字」が描かれて閉じた前巻。つづき。ますむら氏念願だったという海豚の場面の煌めきに見入ってしまう。けど、この巻で際立ちどきりとするのは苹果の赤、蠍の火の赤。二人が食べずにポケットに入れた苹果。全てを内含し超える蠍の激しい火。ふっと途切れるように終わるこの巻は重かった。皆なんて淋しそうな眼をしているんだろう。愛しく切なく苦しい。氏も言うように〈果てしなく、いっぱい〉の賢治の世界を曼荼羅と見るならば。どこまでも続き循環する世界を思いたいのに。哀しみばかりが。2023/07/08