内容説明
漢文の流儀に游ぶ22のエッセイ。隠者・詩人・旅人たちがめぐる読書の宇宙。
目次
1 詩想の力(隠者の読書、あるいは田園の宇宙;自然を楽しむ詩;詩人の運命;詩識―詩と予言;天上の庭―「玄圃」)
2 境域のことば(北京八景―記憶された町;訓読の自由;来たるべき国語;思惟する主体;旅人の自画像)
3 漢文ノート(下宿の娘;詩のレッスン;恋する皇帝;緑陰読書;風立ちぬ;黄色い鶴;花に嘯く;不如帰;窈窕たる淑女;日下の唱和;天朗気清;赤壁の月)
著者等紹介
齋藤希史[サイトウマレシ]
1963年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都大学人文科学研究所助手、奈良女子大学文学部助教授、国文学研究資料館文献資料部助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
24
漢文を巡る随筆集。中でも読書についての話が興味深かった。晴耕雨読の元の意味は今の悠々自適のイメージではなく、勤勉さを示す言葉だったかもしれないという。そこから、優雅な読書と勤勉な読書、悠々自適な隠者の読書と科挙のための立身の読書の対比へと話が広がってゆく。書物の世界が俗世から遠くへ離れた境地へと誘い、心を遠くまで自由に遊ばせる、隠者の読書は魅力的だ。 素晴らしい漢詩もいろいろ紹介され、陶淵明の「山海経を読む」という漢詩は、初夏の心地よい微風の中で、春の酒と育てた野菜を肴に、ゆったりと読書をして想像の翼を⇒2022/01/30
kenitirokikuti
5
「思惟する主体 湯川秀樹と漢文脈」〈中国古文は、唐の韓愈や柳宗元によって新しい展開を得た。[…]調子のよさや典故の華麗さよりも論理を優先させた古文を主張しのである。[…]意識的な助字や段落の使用など、それは作られた文体であった。近世日本の助字の学が発展するのは、唐宋古文の論理展開が助字に負うところが大きかったからだ。〉p.128▲「窈窕(ようちょう)たる淑女」 『詩経』劈頭の詩。日本のテレビドラマ「やまとなでしこ」の韓国版リメイクは『窈窕淑女(よじょすんにょ)』。この「窈窕」、漱石の漢詩にもあり…以下略2019/06/15
garyou
0
ときどき「あー、かういふ文章、国語のテストに出さうだなー」と思ひつつも、現代国語の文体に関する話とか、詩讖に関する話とか、メモとりつつ興味深く読む。「晴耕雨読とは」といふやうな話もおもしろい。 結局、現代国語といふか口語文といふかにはスタイル(文体)は望み得ないのだらうか。あと数百年ほど待たないとダメなのだらうか。そんな気もする秋のゆふぐれ。2011/04/27