内容説明
タン・マラカ、ホー・チ・ミン等アジアの革命家が逮捕された「1931上海ヌーラン事件」の闇に、米国公文書館資料を駆使して光をあて地下ネットワークを発掘する力作。
目次
第1章 一九三一年六月、上海
第2章 共産主義運動と上海
第3章 上海での地下活動
第4章 アジアにおける地下活動のネットワーク
第5章 政治情報警察と「イギリス帝国治安維持システム」
第6章 発覚
第7章 地下活動のネットワークとガラスの家
著者等紹介
鬼丸武士[オニマルタケシ]
1973年大阪府生まれ。1997年京都大学法学部卒。2000年京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。2005年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科博士課程修了。博士(地域研究)。京都大学東南アジア研究所講師(研究機関研究員)、政策研究大学院大学助手、同研究助手を経て、政策研究大学院大学助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこっく
6
皆さんはヌーランという人物をご存知だろうか?おそらくほとんどの方が知らないであろう(私もこの本を読むまでは知らなかった)。リヒャルト・ゾルゲなら知っている方も多いであろう。かの有名なゾルゲ事件を日本で引き起こした張本人であり、ソ連のスパイとして共産主義普及のため諜報活動を行っていた人物である。ヌーランはこのゾルゲと密接に関わっている人物であり、中国で共産主義樹立のため尽力した人物である(決して共産主義を称賛してはいないし肯定もしていない)。彼と西欧陣営の激しい攻防の情報戦はスリリングで読み応え十分。2019/06/17
人生ゴルディアス
2
本書のタイトルに惹かれて読んだ。ヌーラン。人名のようだ。舞台は1930年代の上海。魔都上海のイメージにぴったりな、共産主義者とそれを追いかける秘密警察やスパイやらの話。この時代のこの手の話にはまったく疎いので、ほとんどが初見であったけれど、十分読めるくらいにわかりやすく親切に記されている。特に登場人物のバックボーンを章立てして説明してくれているのでありがたい。それにしても、この「大きなもの」のために闘っていた時代の話を読むと、なぜか泣きそうになる。失われた次代を求めて。2014/04/25