感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
の
2
明治初期、西洋から芸術概念が輸入された結果、新たに<美術>という翻訳語が誕生し、絵画と小説を同じ概念の元で意識化していく過程を、日本近代文学の祖「森鴎外」と日本近代芸術の祖「原田直次郎」の交流から読み解く本。鴎外の「うたかたの記」の主人公はドイツ留学中に知り合った原田直次郎その人であり、肖像画ではなくローレライの絵が出てくるのは、ロマン主義的絵画の発想から日本絵画を一新した直次郎にあやかってとのこと。絵を描くことと小説を書くことは一見違うように見えるが、両者も同じく<美術>の創造を目的としていた。2011/01/14
ケン・リヴィングストン
1
美術の授業で触れた「騎龍観音」という作品の、大胆で躍動感あふれる筆致に魅了され気になりだしたのが原田直次郎という画家。どうやら近代日本美術の確立期にかなり独自の動きをした人らしいことがわかり、ますます気になってきた頃に出会った本書。独り、画壇の主流論陣に真っ向立ち向かった気骨ある生き方にすっかり魅了されてしまった。森鷗外作品には二人の友情と経験が色濃く反映されていたことなどわかり、今まで読んだことがなかった鷗外作品をとても読みたくなってきた。2016年2月には埼玉県立美術館で原田直次郎展を開催予定。2015/09/14